「腹膜透析の治療で実現する、在宅でも可能な透析治療」
「腹膜透析の治療で実現する、在宅でも可能な透析治療」
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「腹膜透析の治療で実現する、在宅でも可能な透析治療」
わが国では、人工透析といえば「血液透析」が一般的でした。しかし近年、高齢化が進み、医療費が年々増大する中で、血液透析一辺倒の治療には限界が出てきています。そこで、「腹膜透析」を含めた治療を推進することで、超高齢社会という現状に適応することが可能になるのではないでしょうか。
血液透析が約97%の現状
腎臓の機能が正常に働かなくなった場合の治療法として、わが国一般的なのは血液透析です。血液透析は、ダイアライザーと呼ばれる人工的な機械を用いて、血液をきれいにする方法で、通常、週3回通院し、一回につき4時間ほどの透析を受けることになります。
日本透析医学会の「2018年末の慢性透析患者に関する集計」によると、国内の約97%の透析患者が血液透析を受けているとしています。
一方で、「腹膜透析」はお腹の中に透析液を流し込み、一定時間貯めておくことで、体に不要な老廃物や余分な水分を「腹膜」を通して外に排出することで、血液をきれいにする治療方法です。日本では馴染みが薄い治療法ですが、欧米では積極的な活用が進んでいます。
超高齢社会で「通院困難な透析患者」が増加する
腹膜透析は、「腹膜」を介して血液を浄化にする仕組みです。全身の血液を体外に出して浄化する血液透析と比べて効果は緩やかですが、その分、身体にも優しい治療法です。また、現在の超高齢社会において、政府は「在宅医療」を推進しており、腹膜透析は在宅で行える透析治療として時代に合った治療法と言えるでしょう。
日本の年齢別人口推移をみても、透析患者の高齢化がさらに進むことは明らかです。日本透析医学会の「2018年末の慢性透析患者に関する集計」によると、現在の透析患者の平均年齢は68.75歳で、平均年齢は年々上昇しているとしています。また、65歳未満の患者数は2012年から減少し、70歳未満の患者数は2017年から減少傾向にあります。わが国の透析患者の増加は70歳以上の患者数の増加によるものであることがわかるとしています。
血液透析は、週に平均3回の通院が必要で、サポートをする家族を含めた高齢化が進むことで、医療機関への通院が難しくなったとき、どうやって透析治療を継続するのかは、我が国にとって早急に解決しなくてはならない課題です。
図 慢性透析患者 年齢分布の推移,1982-2018
出典:「2018年末の慢性透析患者に関する集計」(日本透析医学会)
腹膜透析の選択で、自宅で最期を迎えられる
現状では、終わりのない入院(入院透析)しか選択肢がないの状況です。通院が難しくなった患者は、入院機能のある透析施設に転院となり、基本的には一生、最期までそこで過ごすことになります。しかしながら、腹膜透析を選択肢に入れれば、この状況は一変するのではないでしょうか。
腹膜透析のメリットは、通院回数を減らすことができ、自由に過ごせる時間が作りやすい。また、食事制限が緩やかで、残っている腎臓の機能を長持ちさせることができます。腹膜透析を選択肢に加えることで、自分の生活に合わせた治療を行えるだけでなく、終末期においては、自宅で治療を続けることが可能となり、多くの人が希望している自宅で人生の最期を迎えることができるのです。
血液透析と腹膜透析を組み合わせてトータルにフォローできる体制へ
腹膜透析は、腎代替療法の一つの治療法として十分な医学的根拠もあり、近年欧米では増加傾向にあります。これからのわが国の透析医療機関の方向性として、血液透析の機能と腹膜透析の機能を組み合わせることで、腎疾患患者の保存期、透析期、終末期、そして腎移植の準備に至るまで包括的にフォローする体制が整うのです。
超高齢社会のわが国において、時代の変化・ニーズに合わせて、従来の透析クリニックから一段進めて、全人的・総合的腎疾患医療アプローチを目指すTRC(Total Renal Care)クリニックを目指すことが大切だと考えます。