楠本先生インタビュー⑥PD(腹膜透析)の普及を阻む課題とその解決法とは?
楠本先生インタビュー⑥PD(腹膜透析)の普及を阻む課題とその解決法とは?
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楠本先生インタビュー⑥PD(腹膜透析)の普及を阻む課題とその解決法とは?
[楠本先生インタビュー⑥PD(腹膜透析)の普及を阻む課題とその解決法とは?]
- 楠本内科医院(福岡県水巻町) 院長 楠本 拓生 様
聞き手:
- 医療コンサルタント 大西 大輔(MICTコンサルティング株式会社 代表取締役)
- 医療法人明洋会 理事長 柴垣 圭吾 様
大西: では、なぜ腹膜透析(PD)はなかなか普及しないのでしょうか。いわゆる「3%の壁」について、先生はどのように感じていますか。
楠本先生: 私が感じている一番の理由は、基幹病院の先生方が「最後のイメージ」を持てていないことだと思います。
高齢者にPDを導入すること自体はできたとしても、「その後、自分の病院に通えなくなったらどうなるのか」「本人が自己管理できなくなったらもう無理なのではないか」と考えてしまい、在宅医療という選択肢を十分に理解できていないと思います。そのため、導入時の説明ができないのだと思います。
そこで、私たちが現在行っている取り組みの一つが、在宅側が療法選択の説明を担うという方法です。
大学病院や基幹病院の先生方は、在宅PDの経験がない以上、イメージできなくて当然です。だからこそ、「その説明は私たち在宅側が責任を持って行います」という形を取っています。
もう一つの取り組みが、同行訪問研修です。近隣大学の先生方に当院へ来ていただき、第1週の月曜日午後に行っている私のPD外来・訪問診療に同行してもらいます。
実際の在宅PDの現場を見ていただくことで、「こんなことまでできるんですね」と、具体的なイメージを持ってもらうことができます。
そのうえで、「説明やその後の管理はすべてこちらで引き受けます。大学の先生方には負担をかけません。血液透析でシャントを作って外に出すのと同じように、腹膜透析もカテーテルを入れていただければ、あとは私たちが全部やります」という形でお話ししています。
高齢者は、その地域で支えましょうという考え方です。
大西: 大学側への研修やイメージの共有と同時に、先ほどお話しされていた訪問看護師さんへの教育も、並行して行っているということですね。
楠本先生: その通りです。訪問看護に対しては、伴走型の教育を行っています。これは松本先生や益満さんも実践されている方法ですが、在宅支援部のスタッフが、訪問看護師さんが慣れるまで一緒に立ち会いながら指導します。
おおよそ2週間ほど、実際の現場で一緒に動きながら覚えてもらう、というやり方です。
大西: 最後の質問になります。私たちは「おうちで透析」という活動を通じて、PDの普及を進めています。目標は3%ではなく、10%、20%へと広げていくことです。
その中で、これから仲間になってほしい先生方へ、メッセージをいただけますか。
楠本先生: 透析医療に携わっている多くの方は、血液透析で苦しんでいる患者さんをたくさん見てきていると思います。その現実を知りながら、「でもこれしか方法がない」と、心苦しく思いつつも、どうしようもないと感じている場面も多いのではないでしょうか。
しかし実際には、血液透析からPDに変えるだけで、驚くほど楽になる方がいます。あるいは、CKM(保存的腎臓療法)という選択肢を取り、「無理に透析をせず、自宅で最期を迎える」という道もあります。
多くの方が「透析患者は病院で亡くならなければならない」と思い込んでいますが、在宅でも、きちんと看取ることは可能です。
患者さんが「どこで死にたいか」という希望に応えられる体制を、私たちはもっと作っていくべきだと思っています。
病院の先生、在宅の先生、訪問診療の先生、そして血液透析の現場で日々患者さんを見ているスタッフの皆さんが、「心苦しい」と感じるだけで終わらず、一緒に協力して解決していければと思います。そこに訪問看護も加わり、地域で完結できる透析医療を作っていきたいです。
そうした理想に共感してくれる先生方と、ぜひ一緒に取り組んでいきたいと思っています。本当に、一緒にやりたいです。







