医療DX①国が進める医療DXの政策について
医療DX①国が進める医療DXの政策について
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医療DX①国が進める医療DXの政策について
[おうちで透析 インタビュー 医療DX①]
- 医療法人明洋会 理事長 柴垣 圭吾 様
- 医療法人明洋会 IT担当 臨床工学部 統括部長 市川 匠 様
聞き手:
- 医療コンサルタント 大西 大輔(MICTコンサルティング株式会社 代表取締役)
大西: 「医療DXが進む中、診療所はどのような準備が必要か」というテーマでお話いただきます。
お話を聞く方々は、クリニック経営者の担当として柴垣先生(明洋会柴垣医院理事長)と柴垣医院のIT担当者として市川さんのお二人になります。大西が医療ITコンサルタントの立場でインタビューをしていきたいと思います。よろしくお願いします。
テーマに入る前に少しお話をしたいことは、もう3年経ちますが新型コロナがまん延した時、医療現場ではデジタル化の遅れがすごく指摘されました。そのため、政府は急速にデジタル化を進めようとしています。
医療DXという言葉が生まれ、デジタルトランスフォーメーションの大号令のもと、オンライン資格確認が2023年4月に全医療機関に対して義務化されました。2023年1月からは電子処方箋の開始と矢継ぎ早にデジタル化が進もうとしています。
最終的なビジョンとしては電子カルテ情報の標準化、そして全医療機関での情報共有まで進めようとしている今、クリニックはどのような事に気を付ければ良いのでしょうか。経営者、IT担当者そしてITコンサルタントの3名でお話をしていきたいと思います。
最初のテーマとして、「国が進める医療DXの政策について」どうお考えですか。オンライン資格確認が義務化されましたが、どのような印象でしょうか。
柴垣先生: 当院は割と透析の患者様が多いのですが、医療費助成の医療券、子供で言えば医療証ですが、そういう公費などに関する部分は紙のままで、一部健康保険証だけがオンライン化されると、医療現場としては結構仕事が増えてしまいます。
一部が紙、一部がデジタルという状態は一番仕事量が増えると感じます。過渡期なのだとは思いますが、本来であればマイナ保険証の中にすべての公費など医療券の情報も入らないと、本当の意味での効率化には繋がらないのではないかなと思います。
もっと言うと、電子処方箋も診療情報も全て入っているというような形にならないと、本当の意味での効率化には繋がらないと思います。多くの医療機関がそうですが、一部はコンピューター管理、一部は紙管理となると、これは実質仕事が2倍になるので、一番効率が悪いです。
本当は初めからグランドデザインの中にタイムテーブルも含めていついつまでに全てオンラインにする、というようなタイムテーブルを載せることによって、初めて効率化が見えてくるのではないかなと思っています。
市川さん: 柴垣先生がおっしゃったように、これは制度ですので国が率先して進めていっていただかないといけないと思います。現場と政策の温度差は思っている以上に大きくて、多分ついてこられない施設が出てくると思います。
それから、これも柴垣先生がおっしゃっていましたが、一部はできているけど、一部ができていない、ということになり結局両方に対応しなければならないとなった時、そのしわ寄せは医療現場やスタッフに来てしまいます。
本当に期限を切って、のっぴきならない課題として捉えて、ロードマップを描いてやっていってもらうことが必要と思っています。
その際、日本はどうしても「取り残されてしまう人をどうしよう?」という考えが出て、保険証の話も、「違う仕組みも作りますから…」というようなことを言い始めます。
そういうことを行われてしまうと結局やらない人たちが出てきてしまうので、どこかでバサッと切り捨てて、他のITが進んでいる国のように、「もうやり切るんだ」ということでやっていっていただかないと、なかなか実現は難しいのかなと感じています。
大西: 成功している国というと、有名なところでは中国、韓国、リトアニアなどでしょうか。そういう諸国で行った施策としては、先ほど出たようにお尻を決めて「絶対やり切る」という施策を実行しました。
今回の2023年マイナ保険証の義務化というのは、恐らくその気持ちなのでしょうけど、例外措置も認めてしまうのが日本ですよね。
こういうケースの場合はやらなくていいよとか、こういう時は免除してあげますよ、という例外を作ってしまう「優しさ」が逆に制度を進められない原因になっているのかもしれません。