宮崎先生インタビュー②腹膜透析(PD)が普及しない原因は?
宮崎先生インタビュー②腹膜透析(PD)が普及しない原因は?
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宮崎先生インタビュー②腹膜透析(PD)が普及しない原因は?
[宮崎先生インタビュー②腹膜透析(PD)が普及しない原因は? ]
- 宮崎内科医院(長崎市) 院長 宮崎 正信 様
聞き手:
- 医療コンサルタント 大西 大輔(MICTコンサルティング株式会社 代表取締役)
- 医療法人明洋会 理事長 柴垣 圭吾 様
大西: 柴垣先生、血液透析と腹膜透析とでは、宮崎先生がおっしゃるように、患者さんの体調やリズム、気持ちの部分はやはり大きく違うのでしょうか。
柴垣先生: 要は今までの腹膜透析は、わりと若い人向けだったと思うのですが、今後は高齢の方々に腹膜透析を行う必要があります。高齢の方は若い人と違って、気力も失せてくるような方々です。
血液透析をやると疲れてしまうとか、もう翌日までずっと疲労感が続く、という方や、あるいは心臓が弱くて血圧が下がってしまうような方に対しては、家でできる透析というのは一つ選択肢としてはあるかと思います。
ただ、家でご本人やご家族、あるいは訪問看護師さんのような外からの人達が協力してやらなければならないというところはあるので、色々な調整が必要になるとは思います。
けれども、最後まで家に居られるという大きなメリットはあると思います。
大西: そのようなメリットがあるにも関わらず、なかなか腹膜透析が普及しておらず、実際(透析患者の)3パーセント程度という統計データが出ているのですが、宮崎先生、その原因は何だと思われるでしょうか。
宮崎先生: 非常に難しいところだと思うのですが、いくつか原因はあると思います。
一つは、患者として、血液透析を勧めるドクター、いわゆる透析導入病院において、血液透析と腹膜透析、腎移植、それから今後は透析をしないという保存的腎臓療法という4つが選べるわけですが、それを適切に説明していないところが結構あるということが色々なデータで明らかです。
現在日本では35万人ぐらいの血液透析患者がいらっしゃるわけですが、血液透析の機械のいわゆるキャパシティは40万人と言われています。
そうすると一回投資して機械を導入してその機械を有効に使うためには、どうしてもどちらかというと血液透析を勧めがちになるかもしれません。
これはもう私のうがった考えかもしれませんが、実際はそういった40万人ぐらいのキャパシティがあるというのは事実ですし、そういった療法選択の上において、腹膜透析の話はあまりされてないという問題が一つ大きいと思います。
そして、そこにあるのは悪循環なのですが、腹膜透析をやって高齢者の方が自宅で非常に生き生きと過ごしている、という姿を知らないドクターが多いので、腹膜透析の良さを話そうにも話せないのです。その成功体験を持たない人が腹膜透析の話をしても、やはり全然違いますよね。
当然、血液透析でも働いている若い方もいらっしゃいますし、高齢者で元気な方もいらっしゃるので一概には言えません。
けれども、体力的に弱った方、認知の方、癌の方、心臓が弱い方、血圧が下がる方などが生き生きとしておられるということを、あまり知らないドクターやスタッフが多いと思います。
そのため、ドクターや医療スタッフがきちっと腹膜透析の良さが分かっていなく、それを上手く説明されていない患者さんが多いというのが一番大きいかなと思います。