宮崎先生インタビュー④腹膜透析の普及に向けて①~大きな阻害要因とは
宮崎先生インタビュー④腹膜透析の普及に向けて①~大きな阻害要因とは
文字サイズ
宮崎先生インタビュー④腹膜透析の普及に向けて①~大きな阻害要因とは
[宮崎先生インタビュー④腹膜透析の普及に向けて①~大きな阻害要因とは]
- 宮崎内科医院(長崎市) 院長 宮崎 正信 様
聞き手:
- 医療コンサルタント 大西 大輔(MICTコンサルティング株式会社 代表取締役)
- 医療法人明洋会 理事長 柴垣 圭吾 様
大西: 柴垣先生も在宅医療に取り組んでもう7年ですね。やってみていかがでしょうか。
柴垣先生: 今、宮崎先生がおっしゃったことは非常に本質的だと思います。
ある時は医療保険を使い、ある時は介護保険を使う、これらをどう使い分けるのか、医者はほとんどそのような知識がないので、非常に難渋します。
在宅一般でも難渋するのですが、特に腹膜透析のように介護保険と医療保険を何対何で使い分けてどうする、というようなことは全く医者の知識外と言えます。そこが腹膜透析の普及の大きな阻害要因でもあると思います。
そのような使い分けというか、患者さんの生活を含めた介護医療資金をどう組み立てるのかということは、もう医者には想像もつかないような複雑さがあります。
宮崎先生がおっしゃったように、そのような内容も本当は医学教育に入れた方が良いのではないかと思います。そうしなければ、在宅医療はなかなか進まないのではないかと思います。
大西: 私は経営コンサルタントとして、先生たちを支える立場なのですが、いつも感じるのは診療報酬や介護報酬については、医療事務の方々が重要な役割を担っているということです。
しかしながら、医療事務を雇えない訪問看護ステーションもあり、看護師自らが計算して請求しているケースも多くあります。
そういった方々を見ていると、点数制度ももっとシンプルであるべきだろうし、もっと分かり易く、患者さんにも説明できるようにして欲しいと思います。
これは、批判になってしまうかもしれないのですが、付け焼き刃であったり、何か絆創膏を張るみたいな制度がどんどんできていっているように思います。
では、先生たちにそういう内容の教育を受けてもらえば良いかというと、ただでさえ忙しい先生たちにそこまでさせたくない、と感じます。
むしろ、もっと報酬を増やせ、サポートするスタッフにも手厚く還元ができるような、プロとして取り組めるような仕組みがいいなと思います。
ただ、景気がずっと悪い中で中々診療報酬も上がらず、ましてや透析医療の診療報酬がどんどん下がっていくので、どうしたものかと感じています。
その中で、制度の問題、サポートの問題、環境の問題、認知度も含めて、色々な問題があるかと思うのですが、どこをどうしたら腹膜透析はもっと普及するのでしょうか。
宮崎先生: それは簡単ではないのですが、一つには保険制度の問題があるかと思います。
腹膜透析液の交換は医療行為ということで、実施できるのは医師、看護師、家族、それから臨床工学技士に限られています。
したがって、ヘルパーさんはできません。もしヘルパーさんができるようになれば、大きく変わってくるとは思います。
ご高齢の方でも自身でできるようなシステムになっているので、ヘルパーさんもある程度トレーニングを受ければできるのですが、医療行為というものは、様々なしがらみもあり、簡単には変わりません。そこが一つの大きなハードルになっていると感じます。