正木先生インタビュー②腹膜透析に消極的だった理由とは?
正木先生インタビュー②腹膜透析に消極的だった理由とは?
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正木先生インタビュー②腹膜透析に消極的だった理由とは?
[正木先生インタビュー②腹膜透析に消極的だった理由とは?]
- 正木医院(京都市) 医師 正木 浩哉 様
聞き手:
- 医療コンサルタント 大西 大輔(MICTコンサルティング株式会社 代表取締役)
- 医療法人明洋会 理事長 柴垣 圭吾 様
大西: 仕事の中で血液透析と腹膜透析を比較検討されることが多いと思いますが、腹膜透析のメリットやデメリットをお話いただければ嬉しく思います。
正木先生: 当初私が腹膜透析に消極的だった理由としては、私が受けた腹膜透析に関する教育が根本的な原因だろうと思います。
本当に古い教育で、腹膜透析というのは若い人がするものであり、自己管理がきちんとできる人でなければ腹膜透析は無理だと教えられました。あるいはお腹の手術をしたような人も無理だと、私は教育を受けてきました。
私はそうなのだろうと信じていたわけです。これが、私が最初、腹膜透析について消極的だった理由です。
それからもう一つ、被嚢胞性腹膜炎(EPS)という重篤な合併症があります。こういう合併症があるということも消極的な理由の一つになっていたと思います。
ただ、自分で腹膜透析の勉強をしてみると、今言っていたようなことが全て誤りであるということに気付き、そこから腹膜透析のことを前向きに考えるように、中立的に考えられるようになったと考えています。
腹膜透析のメリットに関しては、これはもう簡単に言うと非常に体に優しい治療であると言えると思います。患者さんにとって非常に優しい治療であると言えます。
腹膜透析は血液体外循環をしませんので、心臓に負担がかかることもありません。透析中や透析の後、血圧が下がって非常にしんどい思いをするというようなこともありません。
そういう意味では非常に体にとって優しい治療であり、負担の少ない治療であると言えます。これがまず一つ医学的な大きなメリットです。ですから、ご高齢の方や心臓に持病をお持ちの方にとっては、非常に良い治療方法であると考えます。
それから、もう一つのメリットは、社会的に言いますと、通院回数が血液透析に比べると圧倒的に少なくて済む、ということがあります。
血液透析ならば基本的に週に3回、1回4時間の治療を受けなければいけません。けれども、腹膜透析の場合、通院は月に1回ないし2回で済みます。
その間の治療は自分でするわけですが、これまでの日常生活を基本的に続けていくことができます。そのような意味でも、患者さんが透析を始める前の生活を維持しやすいという大きなメリットがあります。
また、腹膜透析は患者さんにとっての食事制限が血液透析に比べると緩くなります。これも毎日のことですから、患者さんにとっては非常に大きなメリットだと考えています。
さらに言うと、血液透析では全身状態がよろしくなくなって血液透析をすると、血圧が下がってしまって非常にしんどい思いをしながら透析をしないといけません。そして亡くなるまで、血液透析を続けないといけません。
さらに血液透析に関しては、在宅血液透析という方法はありますが、それを除けば自宅ですることはできないため、基本的には施設、さらに施設に通えなくなると入院をして、あるいは施設に入所して血液透析を行うことになります。
つまり自宅での生活ができなくなってしまいます。最終的には自宅では亡くなれない、自宅で看取ることができなくなってしまいます。このような人の尊厳に関わる部分においても、腹膜透析は血液透析に比べるとメリットがあると考えます。