正木先生インタビュー③腹膜透析のメリット・デメリットとは?
正木先生インタビュー③腹膜透析のメリット・デメリットとは?
文字サイズ
正木先生インタビュー③腹膜透析のメリット・デメリットとは?
[正木先生インタビュー③腹膜透析のメリット・デメリットとは?]
- 正木医院(京都市) 医師 正木 浩哉 様
聞き手:
- 医療コンサルタント 大西 大輔(MICTコンサルティング株式会社 代表取締役)
- 医療法人明洋会 理事長 柴垣 圭吾 様
正木先生: もう1点ご質問があったデメリットにつきましては、先ほど、私が「古い教育だと感じた」という話と関係します。
腹膜透析は自宅で行う治療であるため、自己管理できる人でなければ成立しない、という考え方があります。
それは一部正しいのですが、今は自分で治療ができなくても誰か介護者の方がいらっしゃれば、その方が本人に代わり腹膜透析を実施することができます。これをアシステッドPDという言い方をします。
これが今非常に重要なポジションになってきています。そのアシストする人は、家族であろうと、あるいは訪問看護師さんであろうと、訪問診療医であろうと、かまいません。そういう人のアシストを受けながら腹膜透析を続けていけるということになっています。
自己管理ができないと腹膜透析はなかなか難しい、というデメリットは存在しますが、アシステッドPDという方法で相当解決できるのではないかと考えています。
また、もう一つのデメリットとして、これもよく言われるのですが、腹膜炎を起こしてしまうということがあります。これは血液透析にはありませんので、確かに腹膜透析特有と言えます。
ただ、昔は確かによく腹膜炎を起こしていましたが、今は平均すると5年に1回ぐらいの発生率となっていますので、実は、ほとんど腹膜炎が起きにくい状況になっていると言えます。
それはなぜかと言いますと、腹膜透析を行う様々なデバイス機器がありますが、これらの機器も非常に進歩していて、無菌状態で腹膜透析を実施することができるようになりましたので、その効果で腹膜炎も非常に少なくなってきているのです。
このあたりが腹膜透析のデメリットということになります。ただ、今申し上げたようにデメリットはいろいろな方法でかなり解決・改善ができていると考えます。
大西: 私も腹膜患者の患者様にお話を伺うと、血液透析の患者様と一番違うのが「明るさ」かなと感じます。自分が腹膜透析をしていることを誰かに言いたいとか、腹膜透析の仲間を作りたいとすごく熱く語られる方が多いです。
そこに何か、「生活の一部としての腹膜透析」と「医療機関で行う血液透析」には、やはり大きな差があるのかなという感じがします。それなのに、日本での腹膜透析患者の割合が透析患者全体の3%というのがすごく歯がゆくて、どうしてこのような低い水準なのだろうと思います。
先生、どうして腹膜透析はなかなか普及しないのでしょうか。
正木先生: これは宮崎先生もおっしゃっていることですし、世の中一般の共通認識なのかもしれませんが、まず透析は歴史的に血液透析から普及しています。施設で行う血液透析というものがまず普及しました。
施設は透析ベッドを持っていますから、血液透析のベッドを埋めないと経営的に難しいという問題があるので、透析患者さんが発生した場合、知らず知らずのうちにどうしても血液透析に誘導していたということはあるのかもしれません。
つまり、療法選択というものがきちんとできていなかった可能性があります。
透析が必要になったときに腹膜透析にするのか、血液透析にするのか、あるいはもう透析をしないでそのまま様子を見るのか、腎臓移植をするのか、という、この腎代替療法の選択をきちんとできていないということが根本的な問題です。