正木先生インタビュー⑥これからの腹膜透析について
正木先生インタビュー⑥これからの腹膜透析について
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正木先生インタビュー⑥これからの腹膜透析について
[正木先生インタビュー⑥これからの腹膜透析について]
- 正木医院(京都市) 医師 正木 浩哉 様
聞き手:
- 医療コンサルタント 大西 大輔(MICTコンサルティング株式会社 代表取締役)
- 医療法人明洋会 理事長 柴垣 圭吾 様
大西: 今お話しいただいた血液透析側の転換というのは、例えば震災の問題、コロナの問題など、様々なリスクの中で腹膜透析が見直されたということもあると思います。
私は関東に住んでいますので、いつ何時関東大震災がやってくるかという不安もあります。
正木先生は京都に住んでいらっしゃり、京都ではあまり地震はないかと思いますが、南海トラフ地震の問題とか、阪神淡路大震災のように地震が発生しないとは限りません。
そのようなときのためにも、何とか早め早めに国が腹膜透析を評価してくれるといいですね。
正木先生: そうですね。ただ、国がそう誘導しなくても、これから血液透析のクリニックは経営がどんどん厳しくなっていくと思います。
これは柴垣先生がよくご存知のことだと思いますが、毎回(診療報酬)改定ごとに点数が下げられています。
患者さんが何人いるとクリニックが成立するかという、いわゆる損益分岐点を考えると、患者数が増えていくほど、どんどん利益は少なくなるという状況です。
さらに、血液透析の患者さんであれば、通院できなくなると入院して治療できる病院に患者さんを送り出す必要があります。そうすると、自分のクリニックの患者数は確実に減っていきます。
クリニックとしてそうならないようにしようと思うと、腹膜透析という方法が一つの選択肢として考えられます。
腹膜透析であれば患者さんがある意味亡くなるまで自分のクリニックできちんと管理することができます。そのような意味で、クリニック経営においても腹膜透析というのは非常にメリットがあると考えています。
さきほど損益分岐という言葉を使いましたが、例えばHD(血液透析)だけ行っているクリニックがあった場合、そこで腹膜透析を始めようとすると、腹膜透析の患者さんを一人持てば、それで損益分岐としてはプラスになります。
なぜなら、設備投資がゼロだからです。機器は基本的にレンタルですから、機器を購入する必要はありません。血液透析をしているのですから、看護師はたくさんいます。ME(臨床工学技士)もたくさんいます。
そのうちの何人かの看護師さんとMEさんが腹膜透析に関われば、あえてスタッフを増やす必要もありません。そうすると、一人の腹膜透析の患者さんを持つことで、損益分岐的にもプラスになるわけです。
そのような意味でも、私は血液透析のクリニックが腹膜透析を行わない経営的な理由はないと考えます。
なんとなく腹膜透析の患者さんを見るのは面倒くさいであるとか、手間がかかりそうであるとか、そのようなイメージがあるのかもしれません。
しかし、実際、私も今、HDだけ行っているクリニックに対して、初めて腹膜透析の患者さんの治療を始めるということでお手伝いしていますが、何のトラブルもなく、スタッフを増やすこともなく、設備投資することもなく、腹膜透析を始められています。
そのようなわけで、これから血液透析を行っているクリニックには、ぜひ腹膜透析を行っていただきたいと思います。
経営的にもプラスですし、患者さんにとっても、自分が通っていたクリニックで最期まで診てもらえるということで、こんな安心で幸せなことはないと思います。
患者さんのためにも、ぜひHD(血液透析)クリニックで、PD(腹膜透析)という選択肢をお持ちになっていただけたら、私は嬉しく思います。