松本先生インタビュー①腹膜透析について〜穏やかな在宅生活を可能に〜

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松本先生インタビュー①腹膜透析について〜穏やかな在宅生活を可能に〜

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松本先生インタビュー①腹膜透析について〜穏やかな在宅生活を可能に〜

[松本先生インタビュー①腹膜透析について〜穏やかな在宅生活を可能に〜]

  • 川原腎・泌尿器科クリニック(鹿児島県姶良市)
    腎不全外科科長・腹膜透析センター長
    松本 秀一朗 様

聞き手:

  • 医療コンサルタント 大西 大輔(MICTコンサルティング株式会社 代表取締役)
  • 医療法人明洋会 理事長 柴垣 圭吾 様

大西: 松本先生、自己紹介からお願いできますでしょうか。

松本先生: 鹿児島で医者をやっている松本です。今日は腹膜透析の話をさせていただこうと思います。

僕自身は魚釣りが好きで、大学は海道大学に進みました。今、鹿児島に住んでいるのも、魚釣りが好きで住んでいるようなものです。

そのような感じで、あまり医者になるモチベーションがないまま学生時代を過ごしていたのですが、たまたま医学部の図書館で、この能勢之彦先生と人工腎臓の父と言われているコルフ先生との対談集「人工臓器に未来をみる」という本を立ち読みして、「臓器不全医療って面白そうだな」と思い、医者の道に進むことになりました。

卒業した年に、ピッツバーグ大学で移植外科の教授だった藤堂省先生が日本に帰ってこられていて、北大の教授になったというので、ちょっと入ってみるかという感じで入ったのが臓器不全医療に携わる最初でした。

先輩には、大平整爾先生がいて、アクセス外科の手ほどきを受け、その後ちょっと縁があってアメリカのミネソタ大学の移植センターで働いた時もありました。

35歳ぐらいの時に、このまま医局にいたら、仕事が増えて面倒臭いし、魚釣りもできないな、と思って、大学の医局を辞めました。

能勢之彦先生は、知っている人も多いと思うのですが、本当に日本人が世界に誇るべき人物で、人工臓器の世界的な研究者です。人工心臓の開発者でもありますし、ご兄弟もみな偉い方々で、北海道では能勢三兄弟と言ったら大変有名です。

北海道大学の第一外科ではいろいろな人工腎臓の研究を行っていて、能勢之彦先生はじめ、皆その流れで、北海道では人工透析が外科から始まっています。

能勢先生はドクターコルフのところで右腕として働いていましたが、1960年代当時、洗濯機を使ってセロファン膜で家でも透析できるのではないか、という論文を書かれました。

それを見てコルフ先生は「お前はもうクレイジーだ」と言ったそうですが、それから70年近く経った今、在宅で透析ができる時代になっているので、本当に先見の明があったのではないかなと思います。

能勢先生は日本に戻られて、北海道の北広島という千歳空港のそばで、移植と人工臓器を中心としたクリーブランドクリニックのような国際高度医療センターを作ろうとする構想に関わっていました。

しかしながら、バブル崩壊で北海道拓殖銀行が破綻したことで、その話はなくなってしまいました。

そんなこんなで私は35歳ぐらいまで大学医局に所属して、臓器移植や腎移植外科、臓器不全外科など様々やってきました。その後辞めて、行ったのが宇和島徳洲会の万波誠先生のところです。

彼は腎臓移植も昔からたくさん行っていました。ご兄弟で瀬戸内グループというグループを組織し、たくさん移植されていました。

万波先生のところでは、いろいろな仕事をしていました。ちょうど修復腎移植の臨床研究があり、プロトコルを僕が書かせてもらったりもしました。

そのようなこともあり、ちょうど患者さんが増えて、多い年は最高でおそらく年間94例ぐらい移植があり、それを2人とか3人の少ない人数で行っていました。

そのような生活を送っていたのですが、中には臓器売買事件などもあり、それはそれで良い思い出なのですが、結論から言うと、生体移植はやらない方がいいな、という思いに至りました。

以上が私の自己紹介となります。

大西: ありがとうございました。

続いて、今後の高齢化社会と腎不全医療に鑑み腹膜透析のたどる道などをお話いただきたいのですが、まずは、今の病院のあり方などについてお話いただければと思います。

松本先生: はい。

私は、腎不全だけでなく、臓器不全や、医療全般、臨床の研究も含めて、俯瞰的に見てきた医者です。多分、世界にも僕みたいな経験を積んだ医者は、あまりいないと思います。

そういう目で、フラットな観点から、今の日本の高齢化社会や腎不全医療について、俯瞰してみたいと思います。

まず、少し例を見てみましょう。

病院で高齢者の方が血液透析を導入したのだが、結局その後家に帰って来られていなくて、入院したままというケースがありますね。

また、高齢の方で、腎臓内科の外来に行ったけど、結局そこでは何も決まらなくて、かかりつけの先生のところに戻り、結局そのまま今もそのような状態というケースもありますね。

そういう時も含めてになりますが、外来医療では、血液透析の説明しか受けてないのではないかと思われるケースがありますね。

また、血液透析をずっとやっていた患者さんで、最近通うのが大変になってきて、もう入院したままという患者さんのケースもあります。

あるいは、高齢なのでもう透析は不要ですということで、お家で過ごされて、だんだんご飯も食べなくなり、水も飲まなくなり、枯れるように大往生されたみたいな話もあります。

逆に、頑張ってきたけど、もういよいよなんか苦しくなって我慢できないようになって、救急搬送され、ICUに入った、というようなケースもあります。

このように、様々な透析に関わる話や高齢化とともに社会の中で透析がどのように行われているのかというのは、見聞きすることが増えてきたと思います。

(続く)

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