在宅PD患者さんの不安の声「慣れるまで大変?」・「医療従事者が周りにいない」
~森田 智子 看護師(医療法人社団明洋会 柴垣医院)インタビュー~

透析に通うのがツライと思ったら
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在宅PD患者さんの不安の声「慣れるまで大変?」・「医療従事者が周りにいない」
~森田 智子 看護師(医療法人社団明洋会 柴垣医院)インタビュー~

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在宅PD患者さんの不安の声「慣れるまで大変?」・「医療従事者が周りにいない」
~森田 智子 看護師(医療法人社団明洋会 柴垣医院)インタビュー~

「腹膜透析」があまり普及していない状況をみると腹膜透析のことを知らない、生活面での情報があまりにも不足しているように感じます。情報発信が、もっと必要なのではないかと感じました。「腹膜透析」を導入する前の印象と導入した後の印象でなかなか患者さんの声というのを聞ける機会がないので、森田さんが見てきてこんな声があったよとか、こんな声はみんなにお伝えしたいなということはありますか。

最初の3か月くらいは生活に治療を取り込むということで、皆さんちょっと慣れなく大変そうなところがあります。しかし、慣れてきてしまえば、「この治療にしてよかった」と感じるようです。生活スタイルの一部になってしまえばそれほど負担はないようです。「この治療にして楽だよ、今は全然苦じゃないよ」という話をうかがいます。

始めた当初は「こんなはずじゃなかった、大変だ」ということも聞きます。「じゃあ始めましょう」と言われても、「一人でやれ」と言われたら誰でも不安なことがたくさんあると思います。そのあたりは私たちも理解していて、患者さんたちは大変だろうな、辛いだろうなと思いながら、最初の3か月くらいはバッグアップを厚めにしていきます。

そして、患者さんが次第に慣れてくると、医療者の手も離れ、ご自身の生活スタイルも確立できてきて、楽しい生活ができるようになると考えています。そうなると、旅行に行きたいとか、こういうことがしたいとか、患者さん本人から希望が出てきたりします。私たちも「旅行などどうですか?」などと聞いてみたり、なるべく治療だけにとらわれず、その人の生活が少しでも楽しくなるようにフォローしていきます。そういうことを引き出しながら生活を整えていくことを助けていきたいと思ってやってきました。

血液透析の話と腹膜透析の話で、一番そこが違う感じがしています。血液透析は患者さんの声を一人一人聞くにはあまりにも患者が多いと思います。20人、30人が同じ場所で治療を行っており、ドクターや看護師が全員に声かけするのはなかなか難しいと思います。

血液透析の患者さんの場合、ご自身で訴えられる方は良いのですけれど、一人一人にお時間を割くことが難しいため、やはりすべての話を聞いてあげることはできないと思います。週に3回透析のために通院されるわけですが、その中で関係性ができて、患者さん自身がお話してくれる方に関しては医療者は耳を傾けるのですけれど、あまりお話をされない方に関してはなかなかすべての生活を把握できないというのが現状になると思います。

一方、腹膜透析は生活とかなり密着しているので、話を聞きながら家族関係とか、家族背景とか、精神的な部分、身体的な部分、社会的な部分というところを重点的に確認していきます。看護師もその視点で関わっているっていうのが血液透析との大きな違いなのかもしれないですね。看護師やドクターの患者一人に対する時間のかけ方が相当違うと感じます。

患者さんが一番不安なのが「何かあったらどうしよう」、「周りに医療関係者がいないから、私だけで大丈夫か」、「家族だけで大丈夫か」ということだと思います。そういう点はどうすれば安心できるのでしょうか?

自立している人であっても、最初は訪問看護師に入っていただいて、一人でできそうだ、医療者の力を借りなくても本来の外来だけで大丈夫そうだ、となってから訪問看護を卒業するという手もあります。基本的には、最初の1、2か月は訪問看護師に入ってもらい、慣れてきて問題がなくなったら離れる、ということはよく行います。若い人だから訪問看護はいらないということではなく、心配であればそのような制度を利用して、訪問看護に入ってもらった方がいいのではないかなと思います。

そもそも寝たきりではなく、まだ40歳くらいの場合、介護保険サービスを利用するというわけにはいかないのですが、そのような人でも訪問看護を利用することは可能なのでしょうか。

最初の導入の何か月かは医療保険で訪問看護を利用することが可能です。導入する看護師に、訪問看護師が必要かどうかをきちんと見定めて介入してもらい、必要がなくなれば卒業する、というような流れでやっていけば良いのではないかと思います。

生活が変わることへの不安があるので、最初の助走期間にきちんと寄り添ってもらえると助かりますね。例えば、子供だと家庭教師とか、筋トレしている人だとパーソナルトレーナーとか、そういう補助輪が必要ですよね。

病院にいると、医療者がそばにいることで安心してできていたことも、自宅に帰ってしまうと急にできなくなってしまったり、急にわからなくなったりするということが発生します。そのような意味で、最初自宅に帰って一人で行う緊張感を和らげるためにも、制度(医療保険での訪問看護師の利用)を使ったほうが良いのではないかと思います。チューブ交換の時の何回かは一緒に行ってもらったり、清潔に保てているかどうか確認してもらったりすることで、安心でき、かつ腹膜炎も予防できます。そのようなことを考えると、1か月、2か月は、若くてもやはり医療者にサポートしてもらった方が良いと考えます。

「腹膜透析」にも、何かあった時はナースコールみたいな仕組みはあるのですか?

もし、何か心配があったり、治療時に何かあったりしたときは、すぐに電話をいただいて対応するという形を、どの病院もとっていると思います。「ご自身で判断しないで、心配だったらいつでも連絡くださいね」とお話させていただいています。

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