腹膜透析(透析治療)導入時の「終末期」についての考え方
腹膜透析(透析治療)導入時の「終末期」についての考え方
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腹膜透析(透析治療)導入時の「終末期」についての考え方
[おうちで透析 インタビュー 終末期の透析医療③]
- 柴垣 圭吾 医師(医療法人社団明洋会 理事長)
- 樋口 千恵子 医師(医療法人社団明洋会)
- 森田 智子 看護師(医療法人社団明洋会)
聞き手:
- 大西 大輔 医療コンサルタント(MICTコンサルティング株式会社 代表取締役)
大西: 私も患者さんの立場で考えると、意思決定するにはやはり材料が足りないし、説明も十分ではない、と思っています。その中で自分の親の世代がまさに団塊の世代で、これから10年20年で終末期になるという状況において、早い段階から何かしらの道筋を知りたいというのはあります。
今日はそのような事も踏まえて、終末期の透析医療にどのような選択肢があるのか考えてみたいと思います。先ほど樋口先生に説明して頂いたように、3種類の選択肢があります。またハードルとして数々の先生がおっしゃるように、制度の問題もあり、医療者の問題、家族の問題というのがあると思います。
そこで、樋口先生にお聞きしたいのですが、透析患者はどのくらい前の段階から終末期について考え始めたら良いのでしょうか。例えば、私は47歳なのですが、47歳で透析をしているとした場合、いかがでしょうか?
樋口医師: 47歳で透析を行っている方の考え方と、70歳代の考え方は全然違うんです。
40代50代は、60代もそうかもしれないですが、まだ平均余命としては結構あると思うので、あと何十年自分が生きられるか、平均的に生きられるとしたら、そこで自分が何をしたいのか、ということを考えて、そこから逆算して「いつぐらいに何をして」と考えるのではないかと思います。
一方、70代で透析を行っていらっしゃる方に関しては、透析患者さんは健常者と比べて寿命が短くなりますので、70代の患者さんが90歳まで生きられるかというと、少し難しくなります。
昔の透析患者さんは若かったので、20年30年生きている患者さんはすごく多かったです。例えば30代40代で透析を始めた患者さんであれば、20年30年と長生きできるのですが、70代で始めたとしたら、恐らく10年〜15年ぐらいしか生きられないと思います。そうすると、その後10年をどのように生きるかを考えることになり、話が全然違ってきます。
大西: そうですね、死が身近ですよね。
樋口医師: ですからどこを終末期とするかというのは難しいと思うのですが、もし70代で透析を導入するのであれば、もうその時点で終末期を考えた方が良いと思うので、導入段階から「残りの人生を自分はどうやって生きたいのか」ということを考えて、「ではそのためにはどうしたら良いのか」と考えても良いのではないかなと私は思います。
大西: そのあたりは時代が変わってきているのかなと感じますね。先ほど先生がおっしゃったように、透析患者さんが若かった頃は、まずは血液透析から初めて、ずっと20年30年経って、そのまま終わる。でも70歳や60歳後半になって透析を始める時、せっかく仕事も終わって悠々自適に生きたいのに、残りの自分の人生の10年間、週3日4時間、結局、会社行くみたいにクリニックに通わなければいけないのは嫌ですよね。
樋口医師: 昔の透析導入期には、「いかにして今の仕事を続けられるか」という、「仕事をしながら、楽しい時間も過ごすにはどうしたらいいか」という話もしていたのですが、今70代で導入する方に「いかにして仕事をするか」という話はまったくしていません。そこは全然違ってくると思います。