【後編】血液透析と腹膜透析との違いを世界一分かりやすく解説してみた!
~樋口 千恵子 医師(医療法人社団明洋会 柴垣医院)インタビュー~
【後編】血液透析と腹膜透析との違いを世界一分かりやすく解説してみた!
~樋口 千恵子 医師(医療法人社団明洋会 柴垣医院)インタビュー~
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【後編】血液透析と腹膜透析との違いを世界一分かりやすく解説してみた!
~樋口 千恵子 医師(医療法人社団明洋会 柴垣医院)インタビュー~
血液透析と腹膜透析は、毎日の水分や尿毒素の変動について違いはありますか。
「血液透析」は通常、週3回行います。例えば月水金で、毎回4時間透析を行いますと、その4時間に体に溜まった水分・尿毒素を一気に除くことになります。透析が終わり次の透析まで食べたり飲んだりした結果、水分・尿毒素は体の中にどんどん溜まっていきます。そして、次の透析で溜まった水分・尿毒素を一気に除くということになるので、水分・尿毒素の体内変動というのは非常に大きくなります。大きいがゆえに、「不均衡症候群」も起きやすくなります。
それに対して、「腹膜透析」は、通常毎日行います。それも大体24時間かけてずっとやり続ける方が多いので、そうすると食べたり飲んだりして水分や毒素は体に溜まるのですが、それを徐々に透析で除いていきますので、体の中の水分・尿毒素の変動というのはあまりなく、一定となります。ただし、毒素や水分の抜け具合というのは、血液透析ほど効率は良くないので、連日24時間かけてやり続ける必要があります。腹膜透析では、ゆっくり時間をかけて治療しながら同じ状態を維持していることになります。
水分や食事制限について違いはありますか。
水分と食事制限も、水分・尿毒素の変動に合わせて制限することになります。
「血液透析」では透析を行っていない時間の方が長いため、水分も飲めば飲むだけ溜まっていきます。食事に関しては、主にはタンパク質が壊れて尿毒素になっていきますので、タンパク質を食べたいだけたくさん食べると、どんどん毒素が溜まっていきます。したがって、水分やタンパク質などはある程度制限が必要になります。
「腹膜透析」も制限がないわけではありませんが、24時間毎日透析をやり続けていますので、水分や食事制限は血液透析ほど厳しくはないということになります。毎日行うことによって変化が少なくて済むことが大きなメリットとなります。
残存腎機能について、尿の量がどのように血液透析・腹膜透析で変わるのでしょうか。
透析を始めた時期というのは、まだ腎機能は残っています。それを「残存腎機能」と言います。残存腎機能は様々なもので見ていきますが、わかりやすいのは尿量です。透析を始めた直後の大多数の患者さんは尿がまだ出ている状況です。尿は出ているものの、その中に毒素が出ていかないというような状況です。まだ、水だけは出ているという状態です。
ところがその残存腎機能がどんどん悪くなってくると、尿自体も出てこなくなってしまいます。そうすると水分も溜まりやすくなってくることになりますし、多少なりとも尿に出ていた毒素も出て行かなくなります。ですから、残存腎機能というのは非常に大事になってきます。
「血液透析」の場合には約半年ぐらいで残存腎機能がなくなってくることが多いです。これに対して「腹膜透析」の場合は、残存腎機能は数年保持されると言われています。
尿が出なくなるという状態をなかなかイメージができないのですが、半年で尿が全く出なくなるのと、数年保持されるというのは結構大きな違いですね。
例えば500㏄尿が出ていれば、その分500㏄の水分を飲んでも体には溜まらないわけです。ところが500㏄出なければ500㏄の水を制限しなくてはならなくなります。尿が出ているというのは透析をやっていく上でも大切なことになります。透析治療でいかに尿を自分で出せるように維持するかはすごく大事な問題です。残存腎機能と生存率は非常に相関すると言われています。
「腹膜透析」を続けていく中で、透析膜の寿命はあるのでしょうか。
「透析膜」の寿命というのは少し聞きなれない言葉だと思います。EPS(被嚢性腹膜硬化症)のところでも説明しましたが、腹膜透析というのは自分の体にある腹膜を使って透析を行っています。内臓の一部である腹膜は交換することはできないため、ずっと続けて使っていると残念ながら腹膜は傷んできてしまって、固くなって厚くなってくると言われています。その年数が5年から10年くらいと言われています。
一方、血液透析では、「ダイアライザー」という機械が腹膜の代わりをしています。このダイアライザーは毎回取り替えており、いつも新しい透析膜を使って透析を行っているので、血液透析では透析膜の寿命というのはありません。いつも新しいものを使えるということで、血液透析は他の異常がない限り、ずっと透析を続けられるということになります。