PD(腹膜透析)の生活―留意点について―
~森田 智子 看護師(医療法人社団明洋会 柴垣医院)インタビュー~
PD(腹膜透析)の生活―留意点について―
~森田 智子 看護師(医療法人社団明洋会 柴垣医院)インタビュー~
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PD(腹膜透析)の生活―留意点について―
~森田 智子 看護師(医療法人社団明洋会 柴垣医院)インタビュー~
腹膜透析の日々の生活についてどのようなことに気を付ければよいでしょうか?
お腹にチューブ(カテーテル)が入っているということを気にしなければならないということが大前提としてあります。そのため、お腹のチューブが引っ張られないように、そして、そこからばい菌が入らないように生活の中で気を付けなければいけないと感じます。また、お腹の中にチューブが入っていますので、便秘になってしまうとチューブの位置が変わってしまったり、便秘が原因で大腸菌による腹膜炎になる方もいらっしゃいます。そのため、きちんと排便コントロールをしていく必要があります。快食快眠ではないですが、便秘にならないように注意することはすごく大切です。
さらに、運動も大切です。軽い運動、例えば散歩は普段通りしていただいて構いません。しかしながら、いきむような、力を入れるような運動は腹圧をかけてしまうこともあるのであまりお勧めはできません。ゴルフやテニス程度なら問題ないと思います。どの程度の運動が良くて、どの程度の運動がいけないのか目安は難しいのですが、いきむ、力が入りすぎる運動は避けましょう、ということになります。
チューブが引っ張られるような行為をしてしまうと、出口部の感染につながることもありますので、きちんと出口部を固定をして運動をしていただかなければならないと思います。例えば、ヨガをやっていて伸びをしたら出口部感染を起こしてしまった方も実際にいらっしゃいます。運動自体は良いのですが、それに対するケアは必要になってくるかと思います。
運動をすると汗をかきます。どうしてもシャワーを浴びたり、お風呂に入りたいなと思うのですが、「お風呂」は入れるのですか?
お風呂に関してはその人の出口部の状態にもよります。出口部を作ったばかりの頃は隙間ができていて、湯船の中の菌がお腹に入ってしまう可能性がすごく高いため、入浴用のパックを着けていただいて、お腹(出口部)にお湯が入らないようにしていただきます。
あとは出る時にシャワーで必ず出口部を洗ってから、出ていただくように説明をしています。お風呂に関しては、ある程度段階を踏んで日常生活に戻していくこととなります。その人の状況によって変わりますので、いつになったら絶対に入れるということは言えないのですが、その辺りは主治医の先生と相談をしながら検討されると良いでしょう。自宅の生活環境、お風呂場の環境などを確認しながら主治医と一緒に相談していくこととなります。
腹膜透析をしながら「旅行」に行くにはどうすれば良いのでしょうか?
旅行に行く場合は、必ずまず主治医と相談していただいて、旅行計画を立てることになります。ご自身で判断するのではなく、主治医に早めに相談をしていただき、「いつどういう旅行に行きたい」と相談をしていただくと良いでしょう。そこで、主治医と今行っている治療時間や治療回数をどう変えられるのか、大体の移動時間を考えて、計画していくことになります。例えば、バッグ交換の時間が移動と重なってしまう時にそれをどうやってズラしていけばよいか、長い旅行の移動時間であれば多少(交換時間を)変更することも可能ですので、そういうところは必ず主治医と相談して決めていく必要があります。
また、長めの旅行の場合であれば、早めに相談していただければ、旅行先(のホテルなど)に透析液を配送することも可能になります。中には、海外旅行を経験されている患者さんもいらっしゃいますので、旅行に行く際は早めに相談をすることが重要だと思います。
もし相談をしないと、自分でこの時間に治療しなければいけないと考えて、絶対それを崩さずに旅行に行かなければならない、と考えるだけでストレスになってしまいますので、先生と相談しながらやっていく必要があると思います。
血液透析になると、週3回血液透析だからなかなか旅行に行けないなどということもよく聞きますが、腹膜透析であれば、ある程度計画を立てればなんとか可能となります。旅行先で具合が悪くなってしまう心配があれば、旅行先で腹膜透析を診てくれる病院があるかどうかもあらかじめ調べておいて、旅行先で具合が悪くなった場合にはこの病院だったら腹膜透析のサポートができますよと、患者さんに提示することもできます。そういう意味では、腹膜透析は近距離だけではなくて遠距離の旅行も可能となるのです。