PD(腹膜透析)における食事―食べてはいけないも物、食べて良い物
~森田 智子 看護師(医療法人社団明洋会 柴垣医院)インタビュー~

透析に通うのがツライと思ったら
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PD(腹膜透析)における食事―食べてはいけないも物、食べて良い物
~森田 智子 看護師(医療法人社団明洋会 柴垣医院)インタビュー~

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PD(腹膜透析)における食事―食べてはいけないも物、食べて良い物
~森田 智子 看護師(医療法人社団明洋会 柴垣医院)インタビュー~

私は大学病院でずっと透析(血液透析・腹膜透析)に携わり、透析看護認定看護師の資格を取得しました。これまで腹膜透析・血液透析・腎移植の治療の説明や生活指導を行う外来を行っていました。現在は外来と訪問診療で腹膜透析患者さんの診療介助や看護、家族方への指導を行っています。

腹膜透析の方の食事で気をつけなければいけないことなどを教えてください。

腹膜透析の透析液はブドウ糖というものでできています。そのため食事で摂取するエネルギーの他に透析液でもある程度のカロリーを吸収してしまいます。そのため、糖尿病の方はカロリーの摂りすぎになってしまい、血糖値が上がってしまう心配があります。結果として、採血データを見ながら食事で摂るエネルギーを調整する必要があります。逆に普段あまり食べられていない方は、それがエネルギー源となることもありますので、高齢で食事が進まない方でも腹膜透析の透析液を入れているだけで、エネルギー供給ができる利点もあります。

腹膜透析の方で、食べてはいけない物、食べて良い物はありますか。

例えば、「タンパク質」に関しては、腎不全という病態ですので、摂りすぎることは腎臓自体に負担をかけてしまったり、タンパク質の多いものはリンも多く含んでいますのでバランスが必要になります。ただし、タンパク質を減らしすぎてしまうと、腹膜透析では透析液の中でタンパク質も奪われてしまい、外に出てしまいますので、必要な量で良質のタンパク質、すなわちアミノ酸をたくさん含んでいるタンパク質を摂っていく必要があります。そうしないと筋肉が落ちてしまい、生活に支障が出て、寝たきりになったりする原因になりますので、きちんとタンパク質は摂っていく必要があります。

基本的には、食べてはいけない物とか、これだけ食べておけばよいというものはありません。生活の中でバランス良く食べていくことが理想ですが、患者さんにお勧めしているのは「加工品」を避けることです。例えば、カップ麺とかハム、ソーセージなどですね。

食品が材料から口に入るまでに長い場合、それは加工されていたり、保存料が入っていたりします。その食品自体が口に入るまでなるべく早いほうが新鮮で、かつ良いもの(栄養)が摂れるのです。生ものでなければダメということではありませんが、加工過程が少ない食品を摂ったほうが体には良いと患者さんにお勧めしています。

生ものは、血液透析の時はいかがですか。

「カリウム」というものが生もの(生野菜、お刺身、果物)に多く含まれていますので、基本的に多量に摂らないように、血液透析の患者さんにはお勧めしています。逆に、腹膜透析の場合、透析液の中にカリウムが入っていませんので、極力摂っていただくようにお願いしています。摂りすぎは良くないのですが、そこまで気にする必要はないですよ、とお話しています。

腹膜透析で栄養士さんと一緒に共同指導することはありますか?

よほど「塩分制限」ができない人に関しては、やはり栄養指導を必要とするのですが、それ以外の方に関しては看護師も外来についていることも多いので、看護師、医師の両方から説明をすることが多いですね。通院の際に、その都度聞いていただければと思います。

塩分や水分の摂取についての目安はありますか。

透析治療は、完璧に腎臓の替わりになるわけではありません。透析が腎臓の替わりの機能を果たすと考えて健康な時と同じように塩分を摂ると体のむくみに繋がります。塩分の過剰な摂取は喉の渇きを引き起こし、たくさんお水を飲むことで体のむくみに繋がってしまったり、心臓に負担をかけてしまうことになります。基本的には塩分を少なくした方が身体への負担は少ないと考えます。

また、尿が出ているうちは、「水分」を摂っていただいても構わないのですが、尿がどんどん減っていく中、腹膜透析で除水といって、余分な水分を引くこともできるのですが、過剰な塩分を摂ってしまうと、除水がなかなかできなくなってしまうこともあります。結果として、腹膜透析を長く続けられなくなる原因になってしまうので、そういう部分では塩分制限は行っていく必要があると思います。

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