血液透析における病院依存リスク〜危機に備える想像力と腹膜透析〜

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血液透析における病院依存リスク〜危機に備える想像力と腹膜透析〜

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血液透析における病院依存リスク〜危機に備える想像力と腹膜透析〜

[腹膜透析という選択 インタビュー]

  • 樋口 千恵子 医師(医療法人社団明洋会)
  • 森田 智子 看護師(医療法人社団明洋会)

聞き手:

  • 大西 大輔 医療コンサルタント(MICTコンサルティング株式会社 代表取締役)

大西: 私は自分の家族が選択を迫られる状況になった時に、医療の事が何も分からずに何の勉強もしていなかった時、どう感じたかというと、先生の言うことは絶対であると感じました。だから選択肢は無いと思っていました。

最近では、ACP(Advance Care Planning)とかSDM(Shared Decision Making、共同意思決定)という言葉も広まってきていますけど、今から10年20年前は「家族会議?何それ?」「人生会議?何それ」という話だったと思います。そのため、いつも治療する度にドクターと会い、看護師さんともお会いして話は聞くけれども、口を挟むことはあまり無かったなという感じです。

例えば、祖母が胃癌を患っていて、全摘出する必要がある。その後こういう治療をします、で実際開けてみたのですが、もう転移がすごくて摘出できず、すぐに閉めた、という経験があります。

その時も本当にその他の選択肢があったのではないかと感じるのです。胃を全摘すると言われた時に、「ちょっと待ってください」と。部分摘出の可能性は無いのかという相談ができたのではないか。実際には、家族でも話し合わないし、本人も意思決定する前にドクターの前に来てしまうので、もう緊張して話せないんです。その状態で、「今日決めてください」というのは、結構キツいです。よくありますよね、急にバーンと悪化して「今から手術します、今すぐ決めてください」と言われること。

ですから、日頃からこういう事が起きたらどうする、ということをもっと考えておく必要があると思います。先程の災害に関してもそうですね。災害が起きたら迎えが来ない、じゃあ誰々が送って行こうとか決めておくべきですけれど、ちょっとその辺の想像力というのがまだまだ無いのではないかと思います。 今は新型コロナウイルスの感染拡大で、自宅療養患者が増えています。このことについて、透析の患者さんは気付いているのでしょうか。自分の状態が悪化した時に入院する場所が無いかもしれない、ということを。どうなのでしょうか?

樋口医師: 最近、血液透析患者さんの一人で、自己コントロールが悪く、頻繁に水を溜めてきて、もう心不全になりかけているような人がいたのですが、「自己コントロールが悪くて急に具合が悪くなっても今は入院できる所はありませんよ」と伝えています。「だから、いつも以上にちゃんと自己コントロールしてくださいよ」と何回も言うのですが、「そうですねー」とニッコリ笑って次の回もいっぱい水を増やして来院されている状況です。そういう感じで、まあ、なんとかなるんじゃない?という風に思っている感じですよね。私達がいくら一生懸命、「今病院は逼迫していますよ」「行ったからといって入院できませんよ」と、盛んに言ってもダメですね。

大西: さっきの話に通ずると思うのですが、血液透析の患者さんは結構病院への依存度が強くて、病院は受け入れてくれるんじゃないかとか、最後は病院が、お医者さんが、助けてくれるんじゃないか、とすごく思っているんです。正直な事を言うと今は緊急入院はほぼできないし、救急車に関しても先日も言われていましたね、都内は全く救急車が捕まらなくなったと。これはコロナが悪化すれば更に進みますよね。そう言う時に心不全になって救急車で搬送されて、搬送先が無くて自宅に戻ってくる可能性がある。そういう事を考えるとやっぱり災害時もそうだし、入院しなくて済むという「腹膜透析」もひとつの手段ではありますよね。

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