透析における震災対策①透析患者における震災対策の基本について
透析における震災対策①透析患者における震災対策の基本について
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透析における震災対策①透析患者における震災対策の基本について
[おうちで透析 インタビュー 透析における震災対策①]
- 柴垣医院 臨床工学部 統括部長 市川 匠 様
聞き手:
- 医療コンサルタント 大西 大輔(MICTコンサルティング株式会社 代表取締役)
いつ発生してもおかしくないと言われて久しい首都直下地震。2011年の東日本大震災から11年、1995年の阪神淡路大震災から27年が経ちました。その予測される地震の規模はマグニチュード7にも上ると言われ、人口が集中する東京都を直撃した場合、政府の試算では多くの死傷者が出るとともに、数百万人の帰宅困難者が発生すると予測されています。
2022年に入り震度6規模の地震が相次いで起こっています。非常に不穏な空気が漂っています。そこで今回は「大規模災害時における透析医療」について、柴垣医院の市川さんにお話を聞きたいと思います。
大西: それでは市川さん、自己紹介をお願いします。
市川さん: 私は東京都にあります「医療法人社団明洋会」で臨床工学部門の統括部長をしております。明洋会は維持血液透析を中心として、腎代替療法の全域の治療に関わるTRC(Total Renal Care、全人的総合的腎不全医療)クリニックとして活動している医療法人になります。400名ぐらいの患者様を対象として現在治療を行っております。
大西: さっそくお話を聞いていきたいと思うのですが、先日2022年5月25日に東京都は10年ぶりに、地震の被害想定の見直しが出ました。その資料によると、(大規模地震が東京都で起きた場合)死者が6,148人、建物全壊が8万2199棟、建物全焼が11万8734棟。帰宅困難者は452万人と推計されています。
特に注目されているのが、東京都は高層マンションがたくさん建っているのでエレベーター停止が2万2426台。非常に大きな規模の災害が来ると言われています。実際、首都直下地震が起きた場合、医療の現場はどうなると考えますか?
市川さん: 率直に言って、非常に難しい状況になると考えております。過去の震災の経験を踏まえて、従来から色々な対策というのは立てられているのですが、首都圏のように非常に人口が多く密集した地帯での大規模震災というのは誰も経験していなくて、あくまで想像の範疇でしかないということになります。被災する人数が多いので、本当に対応できるのかというような懸念は今現在も持っております。
大西: 実際に地震の際に、何に気を付けなければいけないのかということで、まず地震対策の基本を教えていただいてもよろしいでしょうか。
市川さん: 透析患者様の災害対策において考えなければいけないことは、いくつかに分けて考える必要性があると思っています。
通常の透析の患者さんであるか健康な方であるかにかかわらず、震災そのものに対する備えという考え方が一つ。それから透析患者さんである場合、ご自身の身を守るための手段として、透析中に起きる震災に対してどのように対応するかということがあります。それから震災後に通常の血液透析が今まで通り行えるのかどうか。もし、行えなくなってしまった場合、どのように自分の命を守っていくかというもう一つの考えがあります。これを合わせて考える必要性があると思っております。
大西: 実際、備えとしてはどんなことが考えられますか?
市川さん: 一つには災害用の持ち出し物品です。大混乱の中、避難するわけですが、透析の患者様には透析を継続していかなければいけないという重要なポイントが一つあります。
透析というのは、ただ透析をすればいいというわけではなく、どのような条件で治療をするのかというような情報が必要となってきます。ですので、それらの情報を避難した先にしっかりとお伝えする必要性がありますので、伝えるための情報のツールを準備する必要性があります。