医療DX⑦クリニックデジタル化におけるIT医療担当者の必要性②
医療DX⑦クリニックデジタル化におけるIT医療担当者の必要性②
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医療DX⑦クリニックデジタル化におけるIT医療担当者の必要性②
[おうちで透析 インタビュー 医療DX⑦]
- 医療法人明洋会 理事長 柴垣 圭吾 様
- 医療法人明洋会 IT担当 臨床工学部 統括部長 市川 匠 様
聞き手:
- 医療コンサルタント 大西 大輔(MICTコンサルティング株式会社 代表取締役)
大西: いろいろな事例を見ていますが、担当者は素人でもいいのですが、窓口としてパートナーになってほしいですよね。パートナーが院長から全権委譲されていない限り、やはり失敗しているんですよね。
例えば、パートナーがいる、でも院長にあまり好かれてない、いつの間にかパートナーが辞めてしまった、となると、もうプロジェクトは終わってしまいます。これはあるあるですね。
逆にパートナーがいない時にコンサルが入りすぎて、その人を雇うケースもあります。でも、その人も辞めてしまうことがあります。居場所がなくなってしまうんですね。
その辺りに関しては、院長がある人に任せたとして、能力が少し伴わない場合は外から補う、という決意が必要なのかなと思います。
柴垣先生のところを見ていると、市川さんが外部との付き合い方が上手で、自分の範囲でしっかり対応しながら、元々の本業の技師もされていらっしゃいます。だから、現場とITの両方が分かっているのだと思います。そういう人はなかなかいないですね。
柴垣先生: ITを導入してからは、もう過去の紙の頃には戻れないです。あまりに非効率で。結局最初の動機が「楽をしたい」ということですから。
昔は、患者様ごとに分厚いカルテのファイルをガラガラ押していました。今ではあり得ません。よくそんなことをやっていたな、と感じます。
他の仕事にも言えることですが、多くの医療従事者にありがちなのは、例えば新しいことをやるときに、「また新しい仕事が増えた」と、どちらかというと後ろ向きに捉えてしまいます。過去の古い慣習をそのまま引き継ぐ、という仕事の仕方をしてしまっているので、新しい仕事は負荷だと捉えがちなのですね。
医療ITもそうですし、仕事の仕組みを変えようという話し合いもそうですが、本来はみんなを楽にするとか、もっと良くするための話し合いなのに、「なんでこんな大変なことをやるんですか」、というようなことを言ってしまいます。
でも、何かを生み出すというのは大変なことでありますが、その先に絶対楽ができる状態があるわけです。「楽」という言葉は、医療従事者にとっては多分また反発を招く言葉なのでしょうが、実際に手が空く時間が増えればもっと本質的なことに時間を割けるわけですよね。
市川さん: 例えば、記録のことだけ挙げがちですが、当院の場合は、今、発注も自動になっているので発注作業がありません。
他の施設の場合、納品されたらダンボールを開けて棚に並べる、という作業があるのですが、当院はそれもゼロです。結果として、全く肉体労働がなくなりました。
もし、今付き合っている卸業者さんとのシステム間連携を止めて、発注作業をしなければならなくなったり、ダンボールを開けて棚積みする作業を行ったり、しかも「毎日何十箱も行ってください」と言ったら、多分スタッフはみんな辞めますよね。
でも、最初はこれでも「なんでこんな大変な思いをして仕組みを作らなければいけないんですか」と言われたんですよ。その最終的なゴールのビジョンなどをしっかり説明したり、大変になる分、何かは減らそうという検討だったり、スタッフ間での話し合いが必要だと思います。
そのプロジェクトの舵取りをする人がある程度の権限を持たせてもらって、しっかりと全体を管理しながら仕組みを変えていくことが正しくできれば、実はそれほど難しいことではないと思います。最初からちょっと難しそうと思っているだけかなと思います。
医療IT人材の話は、私がやり始めた当初は確かに意外となかったと思いますが、今は結構増えていると思います。正直なところ、看護師の中からは少し難しいかなと思いますが、我々臨床工学技士は元々工学系なので、コンピュータなどが大好きで自分でプログラムを組める、という方は実は結構います。
ただ、それを病院や診療所の仕事として、「どうぞやって下さい」と言われる環境がないだけです。
例えば、医療AI学会や、そういう医療の最先端の学会にたくさん論文を出しているとか、大学院に行って博士号を取ろうとしているとか、実際に取った人間もいます。
でも、彼らはプロジェクトのリーダーになっているにも関わらず、何かインセンティブをもらったりしているわけではなく、手弁当で学会に行って発表しているだけ、のような状況になっています。
職場の上司が「こいつこういうことできそうだな」というように、そういう人たちをしっかり拾い上げるということを、病院もこれからやっていかなければならないはずです。
そういう人材が自分たちの組織の中に本当にいないのかどうか、しっかり見ればよいのではないかと思います。私はそこに注力するべきなのではないかなと思っています。
大西: 「いない、いない」と言って探さないから結局ずっといないのでしょうね。「いる、いる」と探せば、中にはいるのでしょう。大事なことは可能性のある人を見つけて、チャンスをしっかり与える、ということだと思います。
私達コンサルタントも「この人、良いな」と思う方がいれば、院長先生に推薦して、「この人を核でやってみません?」と提案して進めるのがやはり上手くいくケースだと思います。