透析の治療の種類 −腎不全に対する治療:血液透析・腹膜透析・腎移植−
~樋口 千恵子 医師(医療法人社団明洋会 柴垣医院)インタビュー~
透析の治療の種類 −腎不全に対する治療:血液透析・腹膜透析・腎移植−
~樋口 千恵子 医師(医療法人社団明洋会 柴垣医院)インタビュー~
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透析の治療の種類 −腎不全に対する治療:血液透析・腹膜透析・腎移植−
~樋口 千恵子 医師(医療法人社団明洋会 柴垣医院)インタビュー~
透析治療(腎不全の治療)の種類について詳しく教えてください。
腎臓が悪くなってご自分の腎臓だけでは生きていけない、という状態になった場合、医学的には腎代替療法(RRT:Renal Replacement Therapy)と言いますが、この治療を行って、生命維持を行っていくこととなります。
この腎不全に対する治療は大きく分けて「透析療法」と「腎臓移植」があります。
透析療法の中には「血液透析」と「腹膜透析」があり、日本でよく行われているものに血液透析と腹膜透析の「併用療法」があります。血液透析の中には、施設で行う「施設血液透析」と、在宅で患者さんご自身が行う「在宅血液透析」があります。
また、「腎移植」には「生体腎移植」と「献腎移植」があり、生体腎移植は生きている方から腎臓をもらうもので、献腎移植は亡くなった方から腎臓もらうという形になります。
透析治療は具体的に何を排除し、何を補うのでしょうか。
腎不全になり、自分の腎臓だけでは生命維持が難しくなった状態を「末期腎不全」と言います。そうなると、腎臓で本来行っている6つの働きができなくなっていきます。
1つは「水分」の蓄積です。尿が出なくなりますので、尿の分の水が体に溜まってしまいます。
そして、その結果、尿から出るはずの「尿毒素」が出なくなり体の中に溜まってしまいます。
それから腎臓は、電解質(いわゆるミネラル)や、ナトリウム、カリウム、酸(酸塩基並行)を尿に出しているのですが、それらが出せなくなります。その結果、「ミネラルや酸塩基平衡のズレ」が起きてしまいます。
その他、腎臓の働きとして、「血液を作る」働きがありますが、それがうまく働かないために「貧血」になってしまいます。
また、「血圧を調節する」ことも腎臓は行っていますが、それがうまくできなくなると「高血圧」になっていきます。
「骨の代謝」にも腎臓は関わってきています。腎臓の機能が低下すると、骨の代謝もうまくいかなくなってくるので、骨がもろくなってしまいます。このように、腎臓の機能が低下すると大きく、6つの障害が起こることになります。
この6つのうち、3つの障害(水分蓄積、尿毒素蓄積、電解質・酸塩基並行のズレ)は、透析治療(血液透析、腹膜透析)を行うことで、カバーができます。一方、貧血、高血圧、骨代謝障害の3つに関しては、透析ではカバーできないので、薬を使って調整していくことなります。
ちなみに腎移植は腎臓そのものを身体の中に入れますので、移植した腎臓が6つ全部の働きをしてくれますので、全部カバーしてくれるということになります。
「末期腎不全」はどうやって測っていくのですか。
腎機能を見る指標としては「GFR」という糸球体濾過値というものを使います。これは正しくは「イヌリン」というものを用いたイヌリン・クリアランスという方法で測定していきます。ただし、この測定は非常に難しいので、通常はeGFR(estimated GFR)と呼ばれる値を用います。eGFRは、血液のクレアチニン値と、年齢及び性別によって測定されます。これらGFRやeGFRを使って腎機能を見ていくことになります。
また、eGFRにはステージ分類があり、G1からG5というステージに分類されます。
G1はeGFRで90以上、G2が89~60といったように段階的になっています。G5は、eGFRが15未満です。G4あたりを「高度低下」と呼び、このあたりから透析治療や腎臓移植について考え始めて、G5になると「末期腎不全」と定義され、透析治療や腎臓移植の準備をする必要があると言われています。
右の表(動画参照)は、学会で用いている腎臓の腎機能の区分です。これはGFRの他にも尿蛋白量も見ており、このような複雑な表を使って、患者さんがどういう状態にあるかを確認しています。
緑はほぼ正常で、黄色、オレンジ、赤という段階になっていくとだんだん腎障害が進行すると見ていきます。