なぜ血液透析50年のクリニックが在宅腹膜透析をはじめたのか?
~柴垣 圭吾理事長(医療法人社団明洋会 柴垣医院)インタビュー~


なぜ血液透析50年のクリニックが在宅腹膜透析をはじめたのか?
~柴垣 圭吾理事長(医療法人社団明洋会 柴垣医院)インタビュー~
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なぜ血液透析50年のクリニックが在宅腹膜透析をはじめたのか?
~柴垣 圭吾理事長(医療法人社団明洋会 柴垣医院)インタビュー~
血液透析をお父様、先生と約50年実施されてきて、傍から見ると、「なぜいま在宅透析を始めるのだろう」という疑問があるかと思いますが、始めるきっかけはあったのですか?
当院の透析患者様も高齢になられて、徐々に足腰も弱くなられている。通院が困難になってくる患者様も出てきています。これまでは週3回の血液透析で問題がなかったかもしれませんが、そうは言っていられない時期に差し掛かっているのです。私たちが24時間、生活全体を支える必要のある患者様が出てきていると言えるでしょう。今後もそういった患者様は増える一方だと我々は考えております。「在宅医療」はそのような透析患者様を支える上で絶対に必要と考えたわけです。 これはもちろん、透析患者様に限ったことではありません。地域の診療所として、今後は高齢の方も24時間支える必要がある。そこで、在宅クリニックを立ち上げる必要が絶対にあると考え「在宅医療」を始めたわけです。
在宅で腹膜透析を行うクリニック・病院がたくさんできれば良いと思うのですが、なかなか増えないのは、なぜでしょうか?
血液透析のクリニックが在宅クリニックを併設するというのは、全く違う科の違うクリニックを作ることになります。違う業種業態のクリニックを始めるにはそれなりのハードルがあると思います。一方で、在宅クリニックが透析医療を始めることも症例数が少なく、なかなか診る機会はなかったかと思います。そのため、あまり経験も積めていないのが現状でしょう。そこが在宅クリニックにとってのハードルであると考えております。 我々は透析から在宅を立ち上げる形をとっており、いま、異なる業種業態の2つのクリニックを併設して、相互に連携ができるようがんばっているところです。
患者の立場からすると、自分に透析が必要になった時、できれば入院ではなく、在宅で治療を受けたいという希望があります。それに対してサポートしてくれる体制が未熟だと、どうしても入院透析を選ぶ、という気持ちになってしまうのですが、そのあたりを先生はどう変えていこうとお考えですか。
状況次第で入院が必要な方は今後もいらっしゃると思います。けれども、入院を回避したいという希望があれば、腹膜透析で、在宅で治療することで、これまで退院の見込みのなかった入院の方も家でずっと過ごすことが可能になります。そういう考えのもと、我々は絶対に在宅医療を手がける必要があると考えています。透析患者様が血液透析を続けるにあたっても、高齢で通院困難になった際に、できるだけ患者様の希望に沿って対応させていただこうと考えています。血液透析と腹膜透析の併用も一つの方法です。そのためにも、透析部門と多職種(医師、看護師、ケアマネージャー、介護福祉士など)の間でうまく連携が取れるよう、我々が架け橋になるということが必要なことと思います。
「世の中にPDラストという考え方を広めたい」という願いは、多くの仲間と多くの理解が必要ですね。
そうですね。ですので、そこは多職種(医師、看護師、ケアマネージャー、介護福祉士など)の方々にも腹膜透析の理解を深めていきたいですし、病院との連携も今後はもっと深化させていきたいと考えています。おうちで透析を広めるために、共に歩んでくれる仲間を集めたいと考えています。家に最期まで居るという患者様の選択肢を、病院、診療所、多職種が支えることがこのスキームでは絶対に必要なことです。