コロナ禍における透析事情
~柴垣 圭吾理事長(医療法人社団明洋会 柴垣医院)インタビュー~
コロナ禍における透析事情
~柴垣 圭吾理事長(医療法人社団明洋会 柴垣医院)インタビュー~
文字サイズ
コロナ禍における透析事情
~柴垣 圭吾理事長(医療法人社団明洋会 柴垣医院)インタビュー~
現在、腹膜透析の割合が2.7%、血液透析が97%。この大きな差はどのようなことが理由だと考えられますか?
おそらく今までは透析患者様は、比較的若い方が多かった。そのため、「家で透析をする」というスキームを考えなくても良かったのだと思います。週3回程度、医療機関に通うことができれば、「血液透析」はできるだけ患者や家族の負担がなく行えますので。その結果として、血液透析が97%という数字に表れているのだと思います。しかしながら、いまは時代が変わりました。透析患者様の高齢化が進み、QOL(Quality of Life)が低下したときに、どう対応するかが大変重要な時代となったのです。
現在、新型コロナウイルス感染症の感染拡大は透析治療に影響は出ていますか?
新型コロナウイルス感染症の影響は、間接的に今後出てくると思っています。今回の新型コロナウイルスだけでなく、今後、様々な感染症が出てくる可能性があります。新型コロナ、新型インフルエンザ、様々な新型の感染症が出てくるという中では、いざという時に家でできる「腹膜透析」という方法をひとつの選択肢として持っておくというのは、感染症のリスクを回避する上で大きなメリットになると考えています。
実際このコロナ禍で、「血液透析」から「腹膜透析」に変更した患者はいらっしゃいましたか?
もともと「腹膜透析」と「血液透析」は、併用することが可能です。例えば、週1回は血液透析を行い、残りの5日くらいを家で腹膜透析を行うという、血液透析と腹膜透析の併用療法が認められているのです。実際、この2020年4月に緊急事態宣言が出た時に、こういった併用の患者が、週1回の血液透析をやめて、何週間か家で腹膜透析のみを行っていただいた方もいらっしゃいます。家にずっと居れば、絶対に感染することはありませんので、そういった意味では大きなメリットがあるかと思います。家でできる腹膜透析は、感染症に強い、あるいは災害にも強いのです。東日本大震災の時に、東北の患者が集団で一時東京の方に避難をされて透析をされた。被災地ではなかなか血液透析を実施できなかった場合、腹膜透析であれば、そういった疎開みたいなことをせずに、透析が続けられたはずです。災害に強い、あるいは感染症にも強いということが、腹膜透析の大きなメリットの一つとしてご提示できると思っております。