腹膜透析(PD)・在宅医療に向く患者、向かない患者さんとは 〜透析医療における選択〜

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腹膜透析(PD)・在宅医療に向く患者、向かない患者さんとは 〜透析医療における選択〜

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腹膜透析(PD)・在宅医療に向く患者、向かない患者さんとは 〜透析医療における選択〜

[腹膜透析という選択 インタビュー]

  • 樋口 千恵子 医師(医療法人社団明洋会)
  • 森田 智子 看護師(医療法人社団明洋会)

聞き手:

  • 大西 大輔 医療コンサルタント(MICTコンサルティング株式会社 代表取締役)

大西: 先生たちが腹膜透析を提案したにも関わらず、「結構です」という方がいらっしゃると思います。その人たちはどういう特徴があるのでしょうか。

樋口医師: (腹膜透析の)手技が煩雑だ、自信がない、という人と、ものすごく神経質な人がいます。腹膜透析はお腹に一気に液を入れて溜めて出すというだけなのですが、患者さんとしては入れたものは全部出ないとダメだという感覚があるのでしょうね。出なくても別にそれほど大きな問題ではないのですが、1ccでも足りないと気になってしまうようなものすごく神経質な人は、すごいストレスになってきてしまいます。そういう人は途中でやめる人もいますね。

大西: それは他の医療でもありますね。例えば内視鏡の下剤を飲む時に透明になるまでずっと続けている人がいるんですね。ほとんど透明なのですが、本人は神経質なので不安になって電話が掛かってくるんですね。「透明にならないんですけど、どうすれば良いですか」と。先生たちは「とりあえず、それで良いから来てください」と。ある意味それとよく似ていて、完璧を目指す人はちょっと向かないのかも知れないですね。

まとめると、少し手技が不安である、自分で出来るのかな、不器用だからな、とか、そういう方もいるかもしれないし、もう一人は逆に完璧すぎて、しっかりしなければと不安になってしまう人ですね。

森田さんはどんな人のイメージですか?

森田看護師: 私も、腹膜透析を選んで実際生活してみたけど、すぐ血液透析になってしまった方に何人か出会っています。先生が勧めたから、先生がそれがいいと言ったからということで決めることが多く、実際私たち看護師は会っていないパターンが結構あります。

看護師は患者さんにとってハッピーであれば良いと思うので、なるべく公平に話をします。先生はどちらかと言うと腹膜透析を広めたい、という想いもあって腹膜透析を勧めることもあります。先生が良いと言ったのでやってみたのですが、実際生活がままならなくて、寝る時間が足りないとか、ご飯を食べる時間がないとか、実は精神疾患があってそれが悪化してしまった、などという方もいらっしゃって、本当に生活がままならなくなってしまった、というパターンもあります。

やはりそこは私たちも反省して、医療者として勧めることに責任を持たなければならないと感じます。本当にできるのかどうか、その先の患者さんの人生も考えて提案をしていく必要があるのではないかと思います。

あまり勧めてはいけない人というのも実際いらっしゃいます。本人がやりたいと思っても、ノートに血圧とか体重とかを書かせてみて、それが毎日できない場合は、腹膜透析はちょっと難しいかな、と思います。本当にできるのかどうか、ということを、手術する前に確認しておく必要があったんだという例がありますね。

大西: 生活リズムというか、仕事のレベルもそうですね。週3回ならなんとかできるけど、毎日は無理、という人もいらっしゃいますね。

自宅でできるからいいけれど、拘束時間は長いわけです。だから、例えば在宅勤務の方、今のコロナの時期は増えているでしょうけど、ある意味向いていると思います。一方、トラックの運転手さんとか、そういう人たちの場合、トラックの中で透析するのかしらとか、透析の時間を取ろうとしたら先ほど言ったように寝る時間を削らなければならない、とか課題が出る人もいると思います。「私7時間も寝ていないです」とかね。そういうのもやはりよく話し合う必要がありますよ。

樋口医師: もう一つは逆に、すごくアバウトすぎてしまう人の場合も問題があります。在宅医療なのでやりたくなければやらなくて済んでしまいます。ですので、3日に1回しかやっていない、などという場合も時々あります。ちゃんとやらないですごく具合が悪くなって救急で来た方もいらっしゃいました。私が経験したのは若い男性だったのですが、たまにしか腹膜透析を行っていませんでした。そういう自分で自己管理ができない人は向かないですね。

病院に来たくない、病院に来なくて済むからと腹膜透析を選んでも、お家できちんとやるかと言うとそれもやらない。それで、具合が悪くなってきて苦しくなって運ばれて来る。そういう人ですね。

そういう人の場合、医療従事者がそういう人を見抜けなかったのがいけないですね。医療従事者は、きちんと自己管理できない人を見抜いて、この人は非適応だな、と判断しなければならないと思います。医療従事者が見抜けなくて、腹膜透析を始めた人は途中で断念となります。

大西: 腹膜透析のメリットを何回か伺っている中で、例えば、旅行に行けるとか、お風呂の話とか、食事の話もしてもらいました。色々なメリットがある中で、デメリットとしては、やはり一番は自分にかかっているということがあるように思います。この治療は、全て自分次第。この辺りはこれまでの日本の医療と少し違うのかも知れませんね。

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