終末期の透析医療における選択肢〜血液透析と腹膜透析〜

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終末期の透析医療における選択肢〜血液透析と腹膜透析〜

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終末期の透析医療における選択肢〜血液透析と腹膜透析〜

[おうちで透析 インタビュー 終末期の透析医療①]

  • 柴垣 圭吾 医師(医療法人社団明洋会 理事長)
  • 樋口 千恵子 医師(医療法人社団明洋会)
  • 森田 智子 看護師(医療法人社団明洋会)

聞き手:

  • 大西 大輔 医療コンサルタント(MICTコンサルティング株式会社 代表取締役)

はじめに

現在、透析患者の高齢化が進んでおり、日本透析医学会の「我が国の慢性透析療法の現況」によると、全体の平均年齢は 69.9歳で、平均年齢は年々上昇傾向。最も割合が高い年齢が男女ともに70~74歳。また、65歳未満の患者数は2012年から減少傾向にあり、70歳未満の患者数は2017年から減り続けている。つまり、わが国の慢性透析患者数の増加は、70歳以上の患者数の増加によるものであることがわかります。

大西: 「終末期の透析医療」をテーマに、柴垣先生はクリニックの院長として、樋口先生は大学病院を経験したドクターとして、森田さんは看護師としての視点でご意見をお聞きしたいと思います。最初に柴垣先生、高齢化が進んでいる透析医療の現状について、クリニック経営の中で、透析患者を日々見ていてどう感じていらっしゃいますか。

柴垣医師: 私が中学生くらいの時、父親が透析のクリニックを始めました。ですから40年、50年ぐらい前になりますが、その頃、父親は夜間透析だけを行っておりまして、父を迎えに行きながら私も見学に行ったりしました。例えば、30代40代ぐらいの患者さんが仕事が終わって来られていて、終わるとそれぞれご自分で歩いてお帰りになる、という様な風景でした。

私が病院に勤めていた20年以上前というのは、高齢化はやや進んではおりましたけれども、まだ比較的、患者さん自身が自分で通えるという方が多かったような気がします。

ところが途中からですね、やはりニーズに押される形で(透析患者さんの)送迎を始めたのですが、始めると本当に送迎のニーズが必要ということが分かりました。要は、皆さん高齢化されて体の動きが若い人と同じようには上手くいかなくて、通院が困難という方がいかに多いか、ということを痛感するに至っています。

大西: 私もクリニックに伺う度に、送迎で車に乗られている方は結構大変そうだなと思います。送迎はいつごろからされているのですか。

柴垣医師: もう10年ぐらい前に始めているかと思います。

大西: 高齢化が進んだ先に、透析患者さんが「終末期」という事を考えた時、今度は樋口先生に聞きたいのですが、終末期の透析患者さんはどのような選択肢がありますか。

樋口医師: 選択肢の一つは、そのまま透析を続ける、ということがあります。HD(血液透析)の患者さんでしたら、HDを続ける。そのHDをクリニックに通いでできる間は通って、それで通えなくなってしまったら入院をしてやる方法。それからもう一つはPD(腹膜透析)に移行する方法があります。それと、あともう透析が辛いから辞めてしまう方法。それらが今の日本では選択肢に上がると思います。

大西: 腹膜透析を始めるにあたって、例えばこれまでHDを行っていた人が急に「私、腹膜透析やりたいんです」と言った時に、できるものなのでしょうか。

樋口医師: 体の状態で腹膜透析ができない疾患というのもあるので、そういう方はちょっと無理だと思うのですが、そうでない方に関しては医学的にはできると思います。あとは在宅での医療になりますから、在宅でどうやってPDをやっていくかということになります。ご自分でできれば問題ないのですが、そうでなければアシストが必要になります。ご家族や看護師さん、誰かしらがアシストするにはどうしたらいいかという問題があり、そこを考えなければならないというところが大きな問題です。

大西: できなくはないけれど、高齢になればなるほどサポートする、アシストする人自体も高齢化するので、どんどん厳しい状況になっていきますね。

樋口医師: そうですね、大体がご夫婦の間でアシストするのが手っ取り早いのですが、同じような年代になってしまうと難しいときがあります。そうすると、次に候補に上がるのが娘さんとか息子さんとなるわけです。ところが、そういう方々は働いてらっしゃるので、なかなか全面的にアシストするのは難しい。なので、訪問看護師さんの力を借りて一緒にやっていく、という方々が多いと思います。

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