医療DX②介護業界・医療業界におけるDXと情報共有の課題
医療DX②介護業界・医療業界におけるDXと情報共有の課題
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医療DX②介護業界・医療業界におけるDXと情報共有の課題
[おうちで透析 インタビュー 医療DX②]
- 医療法人明洋会 理事長 柴垣 圭吾 様
- 医療法人明洋会 IT担当 臨床工学部 統括部長 市川 匠 様
聞き手:
- 医療コンサルタント 大西 大輔(MICTコンサルティング株式会社 代表取締役)
大西: もう一つ話し合いたいことは情報共有についてです。オンライン資格については、制度であっていずれやらなければならないことなのだから、ゴールを決めてやっていきましょうということですが、そこに載せる情報についてはいかがでしょうか?
薬がまずスタートして、最終的にはカルテまで行くと思われますが、今医療の現場で情報共有はどのような状況なのでしょうか?
柴垣先生: 医療機関間の情報共有は、いまだにファックスが中心だと思います。介護業界も医療業界もオンラインでやり取りするという基本的なこのDX(デジタル・トランスフォーメーション)の考えを全く自分たちの課題としては捉えていないので、ファックスが当たり前であり、それが唯一の情報共有だと思い込んでいます。
国が「DXやってね」と言っても全然理解が広まっていないのではないかと思われます。「そんなファックスでのやり取りはけしからん、ましてやオンラインの情報のやり取りなんかけしからん」、というのが医療・介護業界の人たちの一般的な考えではないかと、大げさではなく、思っています。
大西: どうすればファックスからオンラインに変わるのでしょうか?
市川さん: おそらく医療の現場の人たちは、オンラインでの情報共有の必要性に結構気が付いていると思います。
例えば、急な入院患者さんが来られた時、私も前に大学病院にいた時そうでしたが、その方のアレルギーや今飲んでいる薬、基礎疾患という情報はすごく大事な情報なわけです。
こういった情報が、例えばPHR(パーソナルヘルスレコード)のようなものでマイナンバーカードから引き出せることになっていれば、何の迷いもなく、即この薬はだめだとか、こういう可能性があるという決断ができるわけです。
でも、先ほど柴垣先生がおっしゃったように、ファックスを待っているとか、ご家族から聞き取らないと分からないとか、本人が喋れなかったら誰から聞いたら良いのか分からない、というようなことは往々にしてあり得るわけです。
そう考えると、現実的にはどのような人間であってもいつ倒れるか分からないわけですから、マイナンバーカードに全部紐付いていて情報を確認できるということは間違いなく恩恵しかないはずです。
多少デメリットはあるにしても、はるかに大きなベネフィットがあるはずなのに、なぜこれをやらないのかと疑問に思います。きっと反対したいだけの人たちが反対しているのだろうなと思います。
情報セキュリティの話で、「カードを拾われたらどうなるんだ」というようなことを言う人がいますが、情報は分散して管理すれば全部根こそぎ取られることはありません。その辺に関しては運用ベースでしっかりとした仕組みを考えればクリアできるはずです。
ただ「情報一元化」と言うだけで、頭からアレルギー反応を示す人たちがいます。何が大事なのかというとことをしっかり考えられていないことが大変障害になっていると思っています。
それこそ、AC(公共広告機構)のようなところでもっと啓蒙活動などを行い、「国民の安全が担保されるんですよ」ということを政府がしっかり説明するべきではないかな、と考えています。
柴垣先生: 反対する人は、そういう中長期的な視点が全くありません。もうどう抗っても世の中は進化していくわけですから、全世界的に見たら今後DXは進まないわけがありません。
そう考えると、やらない理由をまくしたてるというのは時間の無駄でしかないと、私は医療関係者ですがそう思っています。
大西: 私もコンサルタントをしている中で一番感じるのは、先生方のように未来が見えている方々は、今やることは何かということが明確化されていて、それを一個一個コツコツとこなしていらっしゃるな、ということです。
一方で、その日暮らしのような考え方を持っている方々は今さえ良ければいいということで、仮に今不具合があっても何かしらの方法で乗り越えてしまえば、それは過去の話となり忘れ去られてしまいます。
ですから、そのような人たちに、将来を生きることに対しての準備として今は医療DXが始まっているので「長期的な視野で見ましょう」、と言っても話が通じません。
結局利便性を見せるしかないと思います。