日本の医療では患者さんが受け身?治療方法について家族と話し合う重要性 〜腹膜透析・SDM・ACP〜

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日本の医療では患者さんが受け身?治療方法について家族と話し合う重要性 〜腹膜透析・SDM・ACP〜

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日本の医療では患者さんが受け身?治療方法について家族と話し合う重要性 〜腹膜透析・SDM・ACP〜

[腹膜透析という選択 インタビュー]

  • 樋口 千恵子 医師(医療法人社団明洋会)
  • 森田 智子 看護師(医療法人社団明洋会)

聞き手:

  • 大西 大輔 医療コンサルタント(MICTコンサルティング株式会社 代表取締役)

大西: 日本人は、治療方法について自分でこれまであまり選んできていないように感じます。樋口先生の体験から受け身だと感じるところはありますか。

樋口医師: 血液透析の患者さんに、災害の時に病院に来られなくなるかも知れないと話をした時に、送迎で来てるから大丈夫だと思っているんですよね。で、「災害時に車は動かないから送迎は来ませんよ」と言ったら絶句してたんですよ。

大西: じゃあ送迎が当たり前なんですか?

樋口医師: 自分の治療は誰かに何かをやってもらえる、というのが当たり前になっていて、いかなる時でも何かやってもらえると思っているんだなと思いました。災害時に迎えに来てもらえない、自分で何とかして透析に行く手段を見つけなければいけない、という事をこれっぽっちも考えていないと言われて、患者さんは大分受け身だなと私は思いました。

大西: 血液透析の患者だからではなくて、日本の医療の仕組みとしてすごく受け身な感じがします。例えば昔は透析に通うのに、送迎はそれほど発達していなくて、自分で通うのが当たり前でした。ただ競争が起きてどんどん変化して、今は自分の家の前まで送迎してくれるとか、時間を指定できるとか、色々なサービスが出ていますね。それが進めば進むほど甘えてしまうことになります。

では、送迎は来ない、タクシーが来ない、自分で自転車なり電車なりで移動しなければいけない、今日透析しなければ悪化してしまうから行かざるを得ない、となった時に、ふと気付くんですよね。あれ?自分で行くのか、と。

あともう一つ、治療方法を選択する時、いわゆるSDM(Shared Decision Making、共有意思決定支援)の時に、治療方法を患者さんに説明した後、患者さんが「私はこちらを選びたい」と主張せずに、ほとんどの患者さんが「先生がそう仰るんだったらそちらで」となります。

樋口医師: そうですね、血液透析の患者さんはそうですね。腹膜透析は医者が言うから選ぶというよりは、自分でこっちを選びますという方が多いです。

大西: 意志が強いですよね。森田さん、日本の患者さんは特に受け身だなと思うエピソードはありますか?

森田看護師: SDMや治療の説明の時に初めてご家族に自分の思いを伝えるという、事前に家族との間で話し合いができていなく、医療者を介して初めて自分の言葉を伝えて、自分は実は移植がしたかったんだ、実は腹膜透析がやりたかったんだと言われて、家族がびっくりするといった場面に出くわすことが何度かありました。

我々は事前に家族間で話をしておいて欲しく、冊子も渡しているのですが、家族の中でもそういう治療に関して相談ができていない方が実際にいます。人にはよりますが、本音の話をできていないというのが、多分日本の家族なのかなと感じます。

日本はACP(Advance Care Planning、今後の治療・療養について患者・家族と医療従事者があらかじめ話し合う自発的なプロセス)にしろ、今後自分がどうやって生きていきたいか、ということを家族に言っていなかったり、自分がどういう生き方を望むのかをはっきり提示しなかったりする方々が多いと思います。誰かの力を借りないと話し合うことができないんだなとすごく感じたりしました。

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