医療のIT・デジタル化に対する医療人のメンタリティとは―臨床工学士・在宅医療・腹膜透析―
~市川 匠 臨床工学部門長(医療法人社団明洋会 柴垣医院)インタビュー~

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医療のIT・デジタル化に対する医療人のメンタリティとは―臨床工学士・在宅医療・腹膜透析―
~市川 匠 臨床工学部門長(医療法人社団明洋会 柴垣医院)インタビュー~

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医療のIT・デジタル化に対する医療人のメンタリティとは―臨床工学士・在宅医療・腹膜透析―
~市川 匠 臨床工学部門長(医療法人社団明洋会 柴垣医院)インタビュー~

ITマネージャーという言葉が適切かどうか分かりませんが、IT事務長のような専門家が必要だと思いますか。

いま多くの病院でICT委員会など、デジタル機器の導入に関してのワーキングループを作ることが徐々に広がって来ています。その中に「臨床工学技士」がしっかりと関わり、医療安全という視点で必要なことをしっかりと提言していく必要があると思います。結果として、臨床工学技士が運用に深く関わることで、病院のリスクヘッジにもなりますし、患者さんがより安心して高度な医療を自宅で受けられるということが可能になると思います。それは是非進めていかなければいけないところではないかなと思っております。

なぜ、医療の世界はICT化が遅れているのでしょうか?

基本的に医学は経験に基づく科学で、それは何十年という蓄積されたデータにおいて、「こういう治療をした方が治療成績が良かった」「Aという薬とBという薬を比較した時にAの方が良かった」というその積み重ねの学問です。

ここからは私の完全な個人の思いですけれど、そのため、一歩踏み込んで前向きな介入をするというところに関しては、どちらかと言うと思想として保守的になりがちなのではないかと思います。ダメ元でやってやろうというよりは石橋を叩いて確実な方を選んでいくというのが医療人のメンタリティなのだと思います。

新しいことを始める時に、恐れもあるでしょうし、「そういうことをやってはいけない」という、誰に言われたわけではないのですが、そういう刷り込みみたいなものがあるのだと思います。「それは今までの習慣でいうとないよね」「今まで誰もやっていないよね、じゃあそれは私たちが一番手になるのはやめておこう」というマインドになっているのではないかと感じます。

これは正直なところ、日本の医療がある程度高度なところで安定して供給されてきたからこそ成り立っていたのであって、現在のようにその社会資源がどんどんなくなっていく、社会保障費を減らさなければいけないという、のっぴきならなくなった時には、そんなことを言っていられなくなると思います。これからは変わっていくのではないかと考えています。

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