デジタル・IT化 〜効率化する事は善である〜

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デジタル・IT化 〜効率化する事は善である〜

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デジタル・IT化 〜効率化する事は善である〜

[対談]

  • 柴垣 圭吾 理事長(医療法人社団明洋会 柴垣医院)
  • 大西 大輔 医療コンサルタント(MICTコンサルティング株式会社 代表取締役)

大西: 柴垣先生はこれまでずっと透析医療のデジタル化・IT化というものに取り組まれてきたと思います。医療はデジタル化がとても遅れていると思いますが、先生はどうお考えですか。

柴垣: まず効率化ということに対する医療者の誤解があると思います。効率化して楽になるということに対して、何かこう、自分の職や職域が侵されるのではないかと考えてしまう。

大西: 自分の仕事がなくなるとか。

柴垣: はい。あとは楽をするということに対する罪悪感。

大西: それはあるかもしれないですね。

柴垣: そういったところがかなりあります。楽することが良いことなんだというような割り切りが無いんですね。他の業種ですと全然違います。楽することは善です。効率化することが善なんですけれど、医療介護業界というのはそういうことが罪悪というか。

大西: すごく分かります。デジタル化をずっと推進してきて、いつもこれを導入したら楽になりますよって提案をすると、向こうから来るのは「えっ私クビですか?」と言われる。 極端だなあと思ってしまいます。

柴垣: そうなんですよね。全然そんなことはないのですが。

大西: ドクターは意外に楽したい人種が多い気がするんです。ただ看護師さんと事務さんはものすごく、ボランティアスピリッツというのか、ホスピタリティというのが高くて、何か楽しちゃいけない、あるいはいつ自分がクビになるかもしれないという恐怖を持っている気がします。これは特に事務さんから感じるんです。看護師さんは転職すればいいやと思っているかもしれないけど、事務さんはここで働き続けたい、そのためにはこの仕事が必要だ。
何かその辺が誤解を生んでいるような気がします。

柴垣: 仕事がなくなるわけでは全然ないので、そこは全く心配する必要はないはずです。やっぱり成功体験が必要なんだと思うんですよ。こんなに楽になった、こんなに効率化したっていうのは成功体験があると、どんどん進むようになると思うんです。その最初の成功体験が無いがために、すべての新しいことに対して後ろ向きになるというのが、医療と介護の現場の現状でありマインドであり、文化だと私は思っています。

大西: その成功体験を積む第一ハードルが電子カルテじゃないですか。これは結構ハードルが高い。最初が予約システムや自動精算機ならば進んだかもしれない。

国が、1999年に電子カルテを法的に認めて、2001年ぐらいから電子カルテを普及させるというグランドデザインを描いた。しかし、本当にそこだったのか。のちに厚労省はレセコンやオンライン請求に切り替えています。だから、成功体験を積みやすいシステムから伸ばしていけばもうちょっと楽だったかも知れない。

あともう一つ、先生を見ていて感じるのは、デジタル化することで後にどうなるかを、先生はちゃんと分かっていらっしゃるんです。こんなに仕事が減るよ、このデータが溜まってきたらこう使えるよ、と。しかしながら、多くの場合がなんとなく時代の流れでシステムを入れて、なんとなく補助金が付いたから入れて、ということを繰り返しているうちにデジタル化の意味を見失っていったのではないかと感じます。

柴垣: 例えば、電子カルテあるいはクリニック業務の電子化をする際に、「紙撲滅」という分かりやすい目標を挙げないといけないと思います。医療現場で必ず起きるのが、DX化、要するにデジタル化するときに、下手をすると多くのところで紙(アナログ)とデジタルの共存になると思います。

大西: 併用になりますよね。

柴垣: そうすると、それは単に仕事が2倍になるだけなんですね。何の意味も無いんです。ですから、期限を設けていつまでに「紙撲滅」という目標を掲げながらデジタル化をしないと全く意味がないんです。要は、そういう分かりやすい目標を挙げてデジタル化を進めないと何のためにデジタル化するのかまったく分からない状況に陥ると思います。

大西: 先生のクリニックと他のクリニックの大きな違いは、全く紙がないところです。全員がタブレット持って情報共有をしている。昔はカートにこんな分厚いカルテを乗せてガラガラ押していたじゃないですか。そのための道を作らなければならなくて、それを管理する倉庫まで作って。

柴垣: もう今から思い出すとありえない事がありましたね。

大西: 先生の所、紙全然ないですもんね。紙が悪ではないけれど、便利だから。でもやってみたらこんなに違う、ということですよね。

柴垣: もういまさら紙の時代には絶対に戻れないですね。それはうちのスタッフも同じだと思います。

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