透析する場所が無くなる時代に⁈ 〜日本の財政状況からみた在宅医療の必要性〜

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透析する場所が無くなる時代に⁈ 〜日本の財政状況からみた在宅医療の必要性〜

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透析する場所が無くなる時代に⁈ 〜日本の財政状況からみた在宅医療の必要性〜

[対談]

  • 柴垣 圭吾 理事長(医療法人社団明洋会 柴垣医院)
  • 大西 大輔 医療コンサルタント(MICTコンサルティング株式会社 代表取締役)

大西:私はデジタル化の専門家として感じていることがありまして、日本のデジタル化というのは、もともと規制があって、規制が緩和されてから進むわけです。一方で、元々規制が無いところは一気に進みますよね。だから先日も申し上げた話ですけど、医療の世界というのは規制だらけですので5年ぐらい遅れるんですね。

柴垣:いや、10年くらいだと思います。

大西:かも知れませんね。だから、順序があって、まず国がやることを決め、制度を変え、お金を付けて、初めて進むわけです。これに5年~10年かかります。在宅の普及にも10年かかっています。オンライン診療も実は2015年にやっと規制が緩和されているので、もう6年かかっています。ということは、在宅医療に関しても、やはり5年~10年の間に何かしら政治的な判断が無ければいけないと思っています。今始めて5年後か、10年後に花開くというのは、少しスパンが長いビジネスかも知れないですね。

柴垣:確信しているのは、そういった国、あるいはお役所の方針が変わるだけではなくて、もう日本の経済状況が国の政策を変えざるを得ないところまで来ているということです。もうお金の事情で変わらざるを得ない、変えざるを得ない状況です。そういったところに日本が追い込まれるのはもう必定ですね。規制緩和が進むということ、これからあるべき方向に進んで行くことに関しては、実は私は若干楽観視していて、国の経済状況がそうなることをこの国に強制すると私は考えています。

大西:そうですよね。日本はまだまだお金持ちの国という認識があるかも知れないし、中流社会という話もあったかもしれませんが、今は全然違いますよね。

柴垣:全然違います。もう日本社会の質がどんどん劣化しています。それはお金の面でもです。税収もガンガン減っていきます。その中で今と同じことができるわけがありません。

大西:本当にそう思いますね。高い水準の医療を維持してこられたのは、高度経済成長で経済がどんどん伸びてきて、その税収で支えていたわけです。今はどんどん税収が下がってきている時に、もう国は考えますよね。社会保障費を下げなければいけない。その時に真っ先に考えられるのは病院を減らすことですよね。患者さんが入院する場所がなくなってみて初めてみんなが「ハッ?!」として、透析する場所が無いという時代が来た時には、もう間に合わないわけです。

柴垣:在宅をやっていて思うのですが、在宅にシフトするというのも結構時間がかかります。

大西:側で見ていて感じるのは、(在宅シフトには)マインドの問題も結構大きいですよね。スタッフの問題、組織構造の問題。先生が旗を振っていらっしゃいますけど、そこがブレてはダメですよね。

柴垣:そうですね。新しいことを始めようとすると、「何でそんなことやるんですか」「面倒くさいんじゃないですか」と思われるのですが、5年後10年後を見据えた場合に、これはやはり当院のスタッフも含めて、生き残っていくためには、当院のメニューの中に在宅も絶対に必要であると感じています。医療体制として、絶対に必要であるという確信が僕にはあるのです。これは日本の経済状況を考えるともう必然です。

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