【腹膜透析】10年後には欠かせない医療に 〜未来の透析医療に向けて今からすべき事〜
【腹膜透析】10年後には欠かせない医療に 〜未来の透析医療に向けて今からすべき事〜
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【腹膜透析】10年後には欠かせない医療に 〜未来の透析医療に向けて今からすべき事〜
[対談]
- 柴垣 圭吾 理事長(医療法人社団明洋会 柴垣医院)
- 大西 大輔 医療コンサルタント(MICTコンサルティング株式会社 代表取締役)
大西:明洋会では、いち早く在宅シフトをしたわけですけど、その時何を考えて、よし始めよう、と思ったのでしょうか?
柴垣:父が生前、透析患者ではなかったのですが、在宅医療にお世話になっていて、クリニックの医師や訪問看護師が入っていました。父が在宅医療を受けていたということが一つ大きかったかとは思います。それと同時に、自分の患者さんがどんどん高齢化してADL(Activities of Daily Living: 日常生活動作)が落ちていったということもあります。それからもう一つ、寝たきりになった時に、患者の皆さんが永遠の寝たきり透析になってしまうということがあります。死ぬまで続くのです。これも何とかならないかといった思いも非常に強かったです。血液透析だけをやっていては、この患者さんの高齢化、ADLの低下に対応ができないであろうという思いがありました。
大西:先生が在宅医療を始めてもう4年経ちますが、どう感じていますか。
柴垣:正直に申しますと、非常に大変です。それから、なかなか収益性の面でも厳しいものがあります。
大西:この辺りが結構一つの鍵ですよね。今目の前の数字を追って進むのか、将来の変化に対応して準備を始めるのか。柴垣先生は、これまでの蓄積の中で、投資のタイミングとして在宅医療を始めて、多少は赤字が出たとしてもその先を見ていたのかではないと思います。
柴垣:私は信念を持って在宅医療を続けていくつもりです。これは10年後、20年後にはどう考えても必要にならざるを得ないと思います。自分の所で在宅医療を行うということは、透析医療との連携上どうしても必要だと考えて始めたわけですが、今後も継続する予定です。
大西:私はいつも医療関係者と診療報酬など医療政策のお話をする時に、今行っている事が、将来厚生労働省が気付いて点数化されていく、と話しています。これは過去の経験則です。だから先人たちは、多少最初のうちは赤字が出るのはしょうがないのかもしれません。
もし在宅専門の厚生労働省の方が今日の話を聞くことがありましたら、「どうか腹膜透析に高い評価を付けて欲しい」と思います。そうすることで、(在宅透析に)参入する医療機関が増えていくと私は思うのです。経営判断はここだと思います。明日のこと、明後日のことを考えて経営はできません。5年後10年後の未来どうなるのかを考える必要があります。これができないと、恐らく5年後には「えっ?!」という予期しなかった事態が生まれてしまいます。
誰もがそうですが、中長期のプラン、短期のプラン、そういう事を考えた時に、上手くいっている時期にこそ投資すべき、という判断が先生にあったのではないかな、と感じます。
柴垣:おっしゃる通りです。日本の将来を考えると、どう考えても、透析医療がこのままの形で温存されるということはありえません。患者さんの状態を見ても明らかです。今後患者さんはどんどん通院困難になっていくでしょう。そういった方々が倍増していくわけです。その時に、今までと同じ透析医療を続けられるわけがない、というのが私の考えです。そこに対応しないと、10年後20年後には医療をやっていけないというのが私の考えです。
大西:在宅透析の診療報酬での評価と患者負担の軽減が重要ですね。今回70歳以上の一部の方の医療費が「2割負担」に変わりますが、このあたりに手当てをしてあげないと、なかなか在宅医療は厳しいと思います。やはり、在宅透析の点数をもっと高く評価してくれと言い続ける必要がありますね。
柴垣:実はお金をかけなくても国に要望できる事はいくらでもあると思っています。その一つは「規制緩和」です。規制緩和さえすれば、コストをかけずに医療は拡大していきます。規制緩和が進まないことで、日本の医療のデジタル化も遅れているというのは典型例です。