新型コロナと透析医療 〜透析患者30万人の命懸けの通院〜

透析に通うのがツライと思ったら
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新型コロナと透析医療 〜透析患者30万人の命懸けの通院〜

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新型コロナと透析医療 〜透析患者30万人の命懸けの通院〜

[対談]

  • 柴垣 圭吾 理事長(医療法人社団明洋会 柴垣医院)
  • 大西 大輔 医療コンサルタント(MICTコンサルティング株式会社 代表取締役)

大西: 新型コロナがやっぱり様々なことを変えたと思うんですよ。最後のテーマですけど、新型コロナの影響。新型コロナが日本に来てもう一年半経ち、多くの医療機関が経営面もそうだしオペレーションの見直しも、変わってきていると思います。透析医療では何が変わってきていますか?

柴垣: 学会で盛んに言われているのは、やはり腹膜透析ってコロナに強かったよね、ということです。これを幹部の皆さんが仰っているんです。

大西: 確かに、そうですね。

柴垣: これは今後の人口減少を先取りして見ているわけです。患者さんも減るかも知れないし、国の財政状況も全てが悪くなる、と。未来を早く見せてもらっているっていう意味では教訓的な意味が大きいかもしれません。デジタル化も必須。これは見えちゃった、と。

大西: 災害にも腹膜透析は強いじゃないですか。

柴垣: 強いということが過去の地震でも証明されていますし、これも繰り返し学会で言われていることです。

大西: ですよね。例えばツインパック(腹膜透析液バック)であれば電気がいらないですもんね。

柴垣: マニュアル(手動)的なやり方であれば電気は不要です。実際、過去も最近の地震でも毎回経験し証明されていることです。災害に対してPD(腹膜透析)は強かったと。国もこれを経験しているし、このコロナで嫌というほど経験しているんです。密で透析を行うということを止められなかったということが証明されてしまったんです。

大西: もし一人でも感染者が出て、透析の医療機関が全部閉鎖になってしまったら、透析患者は二週間どこへ行けばいいんですかね。

柴垣: どこもないです。そんなベッド用意されてないんです。

大西: そうですよね。そうなると腹膜透析に行くか、空きベッドを探すかですよね。現在の30万人の透析患者の方々は今回のコロナが相当怖かったと思うんですよ。

柴垣: 想像もつかないと思いますね。一人隣で咳をしている、あるいは熱が出ているという方がいるだけで、もう周りの患者さんは戦々恐々でした。

大西: まして今は透析患者の高齢化が進んで平均年齢70歳です。

柴垣: 大げさに聞こえるかも知れないですが、透析患者さんは命がけで透析をやっていたということになります。

大西: 命がけで通って来ていると。

柴垣: 自分がその立場だったらどんなに怖いだろうと思います。初めの頃は特にそうですね。今はマスクをしていればそんな簡単にはうつらないということが分かってきたので、少し安心している部分もあるかと思います。それでも色々な病院の先生方に話を聞いても「こうやって対策していてもクラスターが出てしまった」なんていう話を聞くと、やはりどこでどうつるかというのはまだ分からない部分もあるので、今だって不安に思っている患者さんがいても何の不思議もない。

大西: 今回コロナで分かったことは、感染対策の基本に戻ったわけじゃないですか。マスクをする、手指を洗う、そして密にならない。ということは、もう腹膜透析が一番安全っていうことですよね。

柴垣: 究極的に言うとそうなります。国もそういう風に認識しているし、透析学会の幹部の方々もそういう認識なわけです。そういう発表が学会でもなされています。

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