血液透析から腹膜透析に移行する際の課題とは

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血液透析から腹膜透析に移行する際の課題とは

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血液透析から腹膜透析に移行する際の課題とは

[おうちで透析 インタビュー 終末期の透析医療⑥]

  • 柴垣 圭吾 医師(医療法人社団明洋会 理事長)
  • 樋口 千恵子 医師(医療法人社団明洋会)
  • 森田 智子 看護師(医療法人社団明洋会)

聞き手:

  • 大西 大輔 医療コンサルタント(MICTコンサルティング株式会社 代表取締役)

大西: 日本ではPD(腹膜透析)を選ぶ人が少なく、以前柴垣先生がおっしゃったように97%の患者様が血液透析で、腹膜透析の患者様はたった3%しかいないからこそ、腹膜透析のことが伝わらないのかな、という感じがします。

膜透透析の診療に同行させていただいて、訪問した方々を見たとき、普段日常を過ごしている場所で医療を受けているので「医療のために生きている」わけではなくて、「生きているついでに医療を受けている」という感じがしました。そこが大きな違いかなと思います。これは歳を取れば取るほどすごく感じるのではないでしょうか。

樋口先生がおっしゃっていましたが、がむしゃらに30年40年働いてきて、糖尿病になってしまって透析が必要になり、あと残りの人生をどう生きるかという時に、「自分らしく生きる」とか「QOL(Quality Of Life、生活の質)をしっかり確保する」というのはやはり大切ですよね。

森田さんのお話にあった「家族と談笑する」というのも、家族と一緒にいるからできることですよね。入院して家族のお見舞いも少なくなると、家族に見捨てられた気分になってしまうかも知れません。その辺りは何かきっちり伝えていく必要があるのかなと感じました。

さて、良い話だけではなくて少しPD(腹膜透析)のデメリットの話もしたいのですが、樋口先生、HD(血液透析)からPD(腹膜透析)に移り、もし「PDラスト」に移行する時に、課題は何だと思いますか。

樋口医師: 課題は高齢者の場合は誰がアシストするかですね。PD(腹膜透析)の場合、ほぼ毎日やらなくてはいけないので、そこが非常に大きいです。本人ができれば問題ないのですが、アシストする場合には、アシストする方の時間と労力を割く必要があります。

そこは大きな問題で、家族もそれを良しとしてやるにしても、それが毎日ずっと続くので、やはり結構大変になってしまいます。最初は意気込んでやるのだけれども、「これ、一体いつまで続くの」と感じてしまいます。

そこで「訪問看護師さんに入ってもらいましょう」と、訪問看護師さんに入ってもらうことはできるのですが、今度は制度上の問題が出てきます

介護保険を使っている場合、日本では訪問看護師が入ると介護保険が優先されてしまいます。そこで介護保険を使うと一割負担とか自己負担がどうしても出てしまいます。医療保険でやっていれば自己負担が出ないのに、介護保険が入ってくるがために自己負担が発生してしまいます。そうすると、高齢者でお金に余裕がある方は非常に少ないですから、大変になりますね。

PDは毎日やらなくてはいけないが、毎日やるのがちょっと大変だからアシストで訪問看護師さんに来てもらいたい。だけど、今度はお金を払わなければならない。この辺が問題点ですね。

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