腹膜透析は恵まれている?社会で求められる公平性について〜SDM・家族会議の重要性〜

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腹膜透析は恵まれている?社会で求められる公平性について〜SDM・家族会議の重要性〜

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腹膜透析は恵まれている?社会で求められる公平性について〜SDM・家族会議の重要性〜

[おうちで透析 インタビュー 終末期の透析医療⑦]

  • 柴垣 圭吾 医師(医療法人社団明洋会 理事長)
  • 樋口 千恵子 医師(医療法人社団明洋会)
  • 森田 智子 看護師(医療法人社団明洋会)

聞き手:

  • 大西 大輔 医療コンサルタント(MICTコンサルティング株式会社 代表取締役)

大西: 樋口先生がおっしゃるように家族の問題、制度の問題、そしてお金の問題、これらは、すぐに解決できる問題ではなく、徐々に変えていかなくてはいけない問題かもしれません。

その中でも、私は家族の問題が特に大きいと思います。家族のサポートが難しい場合、その時の頼みの綱が訪問看護師さんだとするならば、例えば透析医療だけ「介護優先」ではなく、「医療優先」にしてもらい、負担ゼロにしてもらうなど、そういった変更があってもいいかもしれませんね。

樋口医師: あとはヘルパーさんが(腹膜透析のアシストを)やってもいいよ、というような制度の変更があれば、単位あたりのコストが減りますので、楽になると思います。それも、もう10年20年言い続けているわけですが、全く改善されないので、制度を変えるというのは非常にハードルが高いです。

大西: そうですね。森田さんはどうお考えですか。

森田看護師: 私達は腹膜透析を知っているからこそ、腹膜透析を特別にしたいという気持ちはあるのですが、知らない人たちにしてみれば「なぜ腹膜透析だけ特別扱いしなくちゃいけないの?」というところもあるかと思います。

世の中には、医療費さえも無料にならずに、難病指定さえできないような病気がたくさんあります。そういう人たちからしてみれば、「なぜ腹膜透析だけ優遇されなければいけないの?それも高齢になって何でこんなに医療費使っているの?」と感じるのは、現状の社会の中ではあると思います。

そのように、社会として腹膜透析だけを特別扱いできないという公平性みたいなものがあるので、やはり家族の支える力の裁量によってはできない人もいるという現状は、正直なところ変わらないと感じます。

原因がわからない病気で、病名が付けられず、難病にも指定されないような病気で闘っている人たちがたくさんいるわけですから、そういう人たちにしてみれば「透析って恵まれているよね」と感じると思うんです。そうなると透析だけが特別というのはなかなか難しいと思います。訪問看護師さんのように、いろいろな病気を見ていると、「透析だけ特別は難しいよね」と言う意味もなんとなくわかります。

樋口医師: 訪問看護師の人ははっきり言っていました。「透析、透析っておっしゃるけど、世の中にはいろんな病気がありますから、透析だけを特別視はできません」と。

大西: それはそうですね。医療従事者は自分の疾患、自分の専門とミクロな視点になりやすいですね。一方厚生労働省の方々はマクロな視点で物事を見ているので、「30万人しかいない透析患者さんの1万人だけの話しているんですか。日本人1億2千万人いるんですけど。」という話にならざるを得ないですね。

話を元に戻すと、やはり、選択肢を提示することは大切で、その選択肢に対して選べる環境を作ってあげることがまず大事だと思います。その時に制度やお金や家族という問題は必ずどの病気でもあり得る話ですが、話し合う文化が大切で、SDM(Shared Decision Making、 協働的意思決定)であったり、家族会議であったりをもっと広める必要がある。

これが日本においてもっとも大切だと思います。今日はドクターお二人と看護師さんと、家族というテーマでお話をさせていただきましたが、こういう場がもっと増えていけばいいなと思います。

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