透析における震災対策④震災時の透析患者様の移送連携について

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透析における震災対策④震災時の透析患者様の移送連携について

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透析における震災対策④震災時の透析患者様の移送連携について

[おうちで透析 インタビュー 透析における震災対策④]

  • 柴垣医院 臨床工学部 統括部長 市川 匠 様

聞き手:

  • 医療コンサルタント 大西 大輔(MICTコンサルティング株式会社 代表取締役)

市川さん: 災害に対して自宅で治療する手段というのは、非常に強みを発揮できると言えるかと思います。

大西: 地震になると、当然電気は止まります。ガス、水道が止まって、インターネットも止まって、確実に血液(施設)透析は厳しい状況となります。

市川さん: そうですね。例えば、東京都の直下型大地震の想定で考えた場合、医療施設側も行政側も基本的には施設透析の患者様にはほぼ全員、避難して透析をする「支援透析」という形で透析の継続を考えていただく、という暗黙の了解みたいなものがあります。多分続けるのは非常に難しいだろうと考えております。

大西: まして、入院透析のように寝たきりの患者様を救急車で移動させることになるのでしょうけれど、それを他府県に移動するとなると相当な仕組みがないと難しいですよね。それを今、議論して着々と構築しているということですね。

市川さん: 現状では東京都の保健局の方で他の自治体との間の調整、あるいは患者移送手段の手配等の準備を行うということになっておりまして、保健局の方で着々とそういった準備が進んでいるかと思います。

これも行政が持っている移送手段だけでは多分間に合わないので、民間の事業者等の支援もなければ成せないと思っております。ただ、翌日にすぐ移動させてもらえる患者さんがいる一方で、何日か待つという方も発生する可能性は非常に高いと考えています。

そのため、先ほどから自助と申し上げておりますけれども、例えば、被災直後に、自家用車などで「ここに逃げますよ」という場所の目処がある程度立っているのであれば、そういったものを待つまでもなく、通院されている施設に「私はこれから〇〇に逃げます」「連絡先はここになります」と言っていただいて、すぐに行動に移していただき、(被災地から)離れていただくというのが、一番ストレスがなく、かつ安全に透析を継続する方法ではないかと考えています。

実際に震災が起きた場合、交通規制がかかってしまいます。例えば東京都の場合は環状8号線より内側への侵入は規制がかかります。環状7号線より内側に関しては一般車両は完全に通行止めになってしまいます。一次規制でそのように決まっておりますので、自家用車で移動できるところは非常に限られます。

色々考えているうちに、車を使えなくなるという可能性は非常に高いですし、そういった場合、車で被災地に入るというのは非常に難しくなります。外に出て行く方は比較的容易なので、そういった意味でも早い段階で判断して行動するということが、一番リスクが少ない方法になるのではないかと個人的には考えています。

大西: 患者さんにとっては、地震が起きたときや津波が発生したときなど、こういった時に誰にどうSOSを出すのか、どうやって行動するのか事前に話し合っておいた方が良いということですね。

市川さん: そうですね。避難所も、どういうところにあって、どこに移動するのか、普段から確認しておいたほうが良いですね。あとは家族が離散した場合に、どこで集合しようとか、どうやって連絡をつけようか、ということは、一般のご家庭でも十分に話し合っておいた方が良いかと思います。透析の患者さんの場合、それがより一層重要性を増してくると言えると思います。

大西: 東日本大震災からもう11年経ち、震災の記憶がだんだん薄れていきますね。忘れてしまうところを再度思い出してもらうという意味で、今、経産省、警察庁などで話し合いが始まっているのだと思います。

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