透析における震災対策⑥震災に備えて医療機関が真っ先に準備すべきものは?

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透析における震災対策⑥震災に備えて医療機関が真っ先に準備すべきものは?

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透析における震災対策⑥震災に備えて医療機関が真っ先に準備すべきものは?

[おうちで透析 インタビュー 透析における震災対策⑥]

  • 柴垣医院 臨床工学部 統括部長 市川 匠 様

聞き手:

  • 医療コンサルタント 大西 大輔(MICTコンサルティング株式会社 代表取締役)

市川さん: 災害時の食事制限の内容というのは平常時の状態と比べてさらに一段階厳しく管理するという必要性があるかと思います。それから食事以外の部分に関しては、先程言ったように一刻も早く安定した透析治療を続けることが重要です。

東日本大震災の直後に透析ができなかったことでお亡くなりになった方はそれほどいらっしゃらないのですが、長いスパンで見た時に不十分な透析、例えば透析時間が通常1週間に3回、4時間やっていた方が、3時間しかできない期間がしばらく続くようなことがあると、透析量としては減るわけです。

そういった方たちが、はっきりと因果関係が分かる訳ではないのですが、長いスパンで半年とか、一年で見た時に、災害関連死なのかなという方たちがちらほらいらっしゃるということが分かってきました。

例えば、東京都で災害が起きた時に都内で透析が継続できるとしても、当然通常通りの透析ができるとは思えません。そのため、東京にいることに固執して不十分な透析を続けるより、体のことを考えるのであれば、安定した治療ができるところに避難していただくというのが第一優先になると思います。

ご実家であるとか、親戚の方あるいは知人の方でご協力いただける方を事前に探してお話をしておいて、その避難先の近くで透析ができる医療機関を調べておくというのが良いかと思います。

もし可能であれば、何もない時に実際にそちらの医療機関に行き、旅行透析のような形で体験的に透析を受けてみて、「あ、ここは安心できるな」という医療施設を見つけ出しておいていただくのが一番良いのではないかと思います。

大西: 一方で、震災に備えて医療機関が真っ先に準備すべきことはどんなことだと思いますか。

市川さん: 我々のようないわゆる町の透析クリニックは、実際には透析中に被災あるいは透析時間外に被災するケースもあるかと思います。その際にどれだけ被害を少なく安全に患者様を透析室からお出しすることができるかどうか、それから一日でも早く通常通りの診療を再開できるようにいかに準備しておくか、ということに尽きるかと思います。

大きな組織のBCPとは少し違いますが、どのように物品を供給するのか、あるいは設備を補修する際にどこを最初に優先的にやらなければいけないのか、などを事前に全て想定しておいて対応する必要性があるかと考えています。

先ほどの支援透析患者様が避難されて透析をする段階になった時には、当然引き受け先に対して情報を提供する必要性がありますので、こちらからいかに質の良い情報を素早く提供できるか、というところに尽きると考えます。

このことに関しては、各施設、多分色々な方法で色々なアプローチでやっていらっしゃると思います。どのように通常の透析に戻していくかということに関して、いかに計画的に推し進めていくかという事前準備が重要になってくるかと思います。

大西: 今非常にデジタル化が進んでいて、どこの施設もほぼデジタルになると、電気が止まるとデータを取り出すことすらもう無理ですよね。

市川さん: そうですね、電気とインターネットが途絶すると難しくなるということが考えられますので、施設の中には非常電源を準備されている施設であるとか、様々な方法でその辺の恒常性を担保しているかと思います。

当院の場合には、通常の状態で毎日一回、透析に必要となる最低限の情報、最低限と言いながらある程度の情報量がありますけれども、そういったものをオフラインで取り出せるような仕組みを独自に開発して稼働させています。

被災してネットワーク上にある仕組みがダウンしたとしても一応スタンドアロンのパソコン上からデータを取り出せます。それから、非常用の発電機というものは準備していますので、最低限のシステム構成で、そちらを印刷物として取り出すことができる仕組みは作っています。

また、生のデータのままでもiPad上であれば、通常から充電しておけばすぐに閲覧することが可能ですので、そちらにデータを移行する仕組みなどというものも準備しています。

大西: 実際先日もインターネットトラブルやランサムウェアのトラブルによって、電子カルテが止まり、病院が二か月間丸々動かなくなった、などという話もありました。やはりBCP対策も非常に大切だなということを感じました。

大規模災害が起きた時に何が起きるか分からないからこそ万全の注意が必要であり、当然患者にとって、そして医療機関にとって一番大事なことは、自分の身は自分で守るということであったり、いかに知人の方や周囲の方を頼れるかという「自助共助」ということが大事なことが分かりました。

今日はありがとうございました。

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