血液透析(腹膜透析)現場で臨床工学技士に求められること―患者とのコミュニケーション―
~市川 匠 臨床工学部門長(医療法人社団明洋会 柴垣医院)インタビュー~

透析に通うのがツライと思ったら
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血液透析(腹膜透析)現場で臨床工学技士に求められること―患者とのコミュニケーション―
~市川 匠 臨床工学部門長(医療法人社団明洋会 柴垣医院)インタビュー~

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血液透析(腹膜透析)現場で臨床工学技士に求められること―患者とのコミュニケーション―
~市川 匠 臨床工学部門長(医療法人社団明洋会 柴垣医院)インタビュー~

血液透析の治療の現場の中で「臨床工学技士」が毎日どのような仕事をしているのかお話いただけますか。

病院と血液透析の施設というものでは、臨床工学技士の役割は少し異なると思います。病院の透析患者さんの場合、多くは入院している間だけ治療を行う、あるいは腎臓が悪くなってきて透析を導入するというもので、血液透析、腹膜透析いずれにしても、導入するまでの間の治療になるわけです。そのため、比較的関わる期間が短く、患者さんと接する際注意しなければならないポイントというのも少し異なってきます。

多くの病院がそうであるように、病院の中の透析室は、実はそれほど大きくなく、10床とか、多くても15床ぐらいまでのところがほとんどだと思います。一方、血液透析のクリニックの方は透析治療の規模がはるかに大きく、地方では100人同時に行うというところも普通にあります。患者さんに対して治療に使う透析装置そのものも少しずつ仕様は違った形になっているケースが多いです。

私たち臨床工学技士の仕事は、そういった医療機器を準備・管理していくことがメインになりますが、それに付帯して、血液透析する際に、例えば「患者様の身体に針を刺して治療を開始する作業」「その治療自体を終える作業」「血液検査のデータを見て分析し、患者さんにとっての治療が本当に良い治療になっているのかを確認する作業」といったことや、「それらを管理するための様々な検査機器や透析の医療機器の保守管理」というものもあります。これら全体が透析クリニックにおける臨床工学技士の仕事になってきます。

それから、これは必ずしも全員ではありませんが、我々は臨床家であると同時に臨床で得られた知見をフィードバックする役目も担っています。多くの臨床工学技士が「学会活動」という、いわゆる研究活動を行っています。毎年様々な関連学会が開催されているので、そのタイミングに合わせて、一年間自分たちが患者さんに向けてやってきたいろいろな治療に関する情報を発表しています。新しい医療資材のデータであるとか、こういう治療をしたら良くなったとか、良いと言われていたが本当に良かったのか、などを世の中に出して、医療のさらなる発展に努めるというところも我々の仕事になってきます。

また、透析クリニックの場合、患者さんとの関係が非常に密なので、患者さんとのコミュニケーションも大事な仕事です。週3回毎回4時間の治療に来るというのは、患者さんにとってやはり負担になっているので、彼らが「あー、もうここに治療に行くのは嫌だ」と思ってしまうと、それはよりしんどい状態になってしまいます。そのため、我々もできるだけ患者さんの負担を少なくできるように努める必要があります。患者さんが「喜んで透析に行く」というわけにはいかないでしょうけれども、「あの人がいろいろと話を聞いてくれるから相談しに行こう」とか「あの人なら安心して任せられるよね」と言ってもらえる施設にするために、患者さんと密にコミュニケーションをとるということが非常に重要な職務になってきます。

先ほど研究という仕事もあると言いましたが、研究はあくまで副次的な仕事であり、臨床工学技士の主な仕事は、数字とにらめっこするような内務的な仕事ではなく、人と向き合う社交的な仕事であるべきだと思います。人と人との関係性を築いていくということが、透析クリニックにおいてはより大事になってくると言えると思います。

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