腹膜透析の患者を支える家族のあり方〜生活管理におけるストレス〜

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腹膜透析の患者を支える家族のあり方〜生活管理におけるストレス〜

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腹膜透析の患者を支える家族のあり方〜生活管理におけるストレス〜

[腹膜透析という選択 インタビュー]

  • 樋口 千恵子 医師(医療法人社団明洋会)
  • 森田 智子 看護師(医療法人社団明洋会)

聞き手:

  • 大西 大輔 医療コンサルタント(MICTコンサルティング株式会社 代表取締役)

大西: 在宅の現場は医療と介護が重なり合っています。介護は日常生活そのものです。今は訪問看護師も全然足りないし、在宅のドクターも全然足りない。今回のコロナではっきりと分かったんですね。救急往診してくれる先生が全然いないんです。そういう事を考えたときに、日本は病院はあるけれど医療従事者が足りていないのではないかなと感じたのですが、樋口先生はどう思いますか?

樋口医師: 私も訪問診療に入って一年半しか経ってないのでまだよく分かりませんが、訪問診療もすごい幅があると思います。ただお看取りのためにいるような先生もいたり、そうではなくて病院と同じように診断し、治療し、器具とかは揃っていないのでできる範囲はすごく狭いですが、そういうふうに診ていこうという医者もいます。そのようにすごく幅があるのではないかと思います。

診療所自体もたくさんの科の医者を抱えて、いろいろな角度から見ていこうと思っている施設もあれば、一人二人の先生でやっていて、いわゆるお看取りとか、患者さんの状態を診に行くようなスタンスの先生など、様々あるのではないのかと思います。まだ他の施設にどういう施設が多いのか私は知らないので、ちょっと何とも言えない状況です。

大西: 在宅医療は、慢性疾患の患者さんを対象にしていて、例えば寝たきりの患者さんで通院困難な患者さんを診るとかですね。だから突然通院困難になったという場合は、昔から言う「往診」に該当します。訪問診療は、ある程度病状が安定していないといけないので、不安定ではありません。だから、様子を観察します。これは慢性疾患の病院と同じ感じです。

長期療養の病院では、一人の看護師さんが多くの患者を担当しますので、本当に大変です。これが在宅に置き換わっているだけだとすると、非常に大変だと感じます。看取りとか観察にしても、例えばモルヒネを打つしかもうできない患者さんなのかもしれない。でもそこに対して、先生がおっしゃった、バリエーションというかグラデーションがありますね。例えば小児の在宅をやっている先生はものすごい救急だったりします。

そういう事を見ていると、日本の医療は先ほどもあったように、実は同じように見えて同じではないんですね。均一施策をしているのは、お金の部分だけであって、サービスの部分は全然違うと感じます。

具体的に、腹膜透析の家族の負担において一番大変なところはどこだと思いますか。

樋口医師: 患者さんが自己管理して腹膜透析をできる人は、家族はある程度見守りの立場となります。家族は全くストレスが無いとは言いませんが、ある程度の軽いストレスで済むと思います。

ただその患者さんがすごく具合か悪くなった時に、家族もできるようにしておいてくださいと私は話をするので、一通りの手技は習っていただくようにはしています。そういう点では、やはり家族にはストレスがかかります。

また、患者さんが自分で腹膜透析をできないとなった場合には、それはもう家族に大きなストレスがかかります。全部一から覚えてやらなければいけないので、ものすごい負担が大きいと思います。

大西: バックの交換業務は、とてもシステマティックにできているし、技術的にもすごく高まってきています。ただ一番気になるのは、患者さんが自分から進んでやりたがらない旦那さんだと、奥さんがいつもハッパをかけなくてはいけない。家族が家族の生活を管理しなければならないとなると、ストレスと感じますね。技術とか手技的なことは慣れていけば覚えるし、訪問看護師が最初にサポートしてくれるので段々覚えていくのですが、リズムを作るのは家族なんですね。

例えばお風呂に入る、その時にどうするかというのも注意しなければいけません。バックが濁っていたとか、菌が入っているかもしれない、腹膜炎の可能性があるかもしれない、という時にすぐ病院に連絡するのも家族の役割じゃないですか。そう考えるとさっき森田さんの言っていた覚悟、これは結構大事なファクターですね。家族にとっての負担がないと上手く回りません。ただその負担を一緒に乗り越えようという家庭であれば、ぜひ腹膜透析を選んで欲しいですね。

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